「就業満足度」の先にある会社の“未来”
株式会社朝日広告代表取締役社長 岡田 哲郎
原点に立ち返らせる「学生の誠意」
当社が2015年度より新卒採用を始めたきっかけは「自社スタッフの中途採用が困難になってきたから」という単純な理由でした。
しかし実際に採用活動を始めてみると学生さんたちの「働きたい」という熱い気持ちが、あらゆる形で伝わってくることで社内に良い刺激が与えられ、採用計画はもちろん社内啓発、そして当社サービスの向上まで想像以上のプラス効果をもたらしてくれています。
私達、求人広告代理店は企業の採用課題を解決することが職務であり、どうしても求職者側の目線よりも採用企業側の目線が強くなってしまいます。
しかし「働く方が何を求めているのか」…求職者側の思いに触れることも、効果的な広告を作るうえで欠かせないことだと考えています。
その点で社会人一年生となる新卒社員は、ほんの数年前までスマホでアルバイトを探し、パソコンで就職活動を行っていた立場だったため、求職者目線での仕事探しにおける要点把握が非常に優れています。
「どんな情報が求職者のためになるのか」「企業が伝えたい想いとは」…難しい事よりも誰かの笑顔や満足を考えて広告を形作っていく、この仕事の原点ともいえる姿勢を、売上重視の雰囲気になりがちな社内に、あらためて思い起こさせてくれています。
そんな誠実で熱い気持ちで仕事に向き合っているからこそ、経験や知識に足りない部分があっても、お客様は人材採用という重要な任務を、当社の新人たちに任せてくださるのだと思います。
即戦力としての活躍が期待できる中途採用、そして社内に新風を起こしてくれる新卒採用を今後も並行し、この仕事が好きで、この会社が好き、という人材が集う会社作りを進めていきたいと考えています。


社員、クライアント共に誠実な岡田社長。新たなアイディアや意見も積極的に取り入れているそうです。
「働く目的」を見出すのは自分自身です。
会社説明会などで「どんな人材(学生)を求めていますか」という質問をいただきますが、就業前の学生さんに、私達が出来上がった何かを求めることはありません。
入社後、仕事において満足のいく結果を出すためのノウハウを教えていくのは私たち現社員の役割と責任だからです。
唯一、学生さんに求めるとすれば「働く目的」を明確に持っていて頂きたい、ということです。
その目的とは「お客様の笑顔のために」という優等生かつ抽象的な回答ではなく、働いた自分自身にしっかり還元される明確な目的でなくてはならないと思っています。
住むところ、食べるもの、着るもの、そして恋人や家族など守るべきものを幸せにすること。
その働く理由の根幹だけは、周りが手を差し伸べてはならない領域だと思っています。
自分のためだけの目的さえお持ち頂ければ、そこから先の「仕事のおもしろさ」や「実現への手段」は僕らが教えることも、気づかせることも、一緒に見つけていくこともできます。
それが会社という「器」だからなのです。
これからの採用活動において当社は、人材を選ぶ立場ではなく、選ばれる企業でありたいと考えています。
それは入社時の給与や待遇という短観的な要素だけでなく、20代の方が30歳、40歳になったときにこの会社で働きながら安定した生活を過ごせる人生設計が描けることが重要です。
そのために今年、当社では家庭を持った社員視点で新たな待遇制度を整えるという試みも行なっております。
どんな職種でも同じですが、仕事には人生の多くの時間を捧げなくてはなりません。
だからこそ目的を持って臨み、自分の努力が自分に還元され、豊かな時間が過ごせることが理想です。
例えば三年働いたのち「この会社に入社して良かった」と思ってもらえたなら、これ以上に嬉しいことはありません。


「選ばれる企業」を目指す朝日広告。現状だけの改善を行うのではなく、社員の将来を考えた制度や取り組みを積極的に行われています。
まずは足元の充実から。
近い世代の経営者やリーダーの方々とお話をすると、会社の理念や未来への成長プランを聞かれる機会が多々あります。
しかし私自身は正直なところ、その場を感心させられるような理念やプランは持ち合わせていません。
様々な考え方があり、正解の無い話ではありますが、社長が崇高な理念や成長プランを対外的に掲げていても、その内側で会社を構成する社員がストレスを抱えているような状態は、中小企業として望ましくないと感じています。
もちろん成長期や危機においては、組織のために瞬間的に無理をしてくれる社員が一人でも多く居ることは心強い事です。
しかし社員に無理をさせる手前で「まずは普通の生活を安心して送れること」「社員が仕事を、会社を好きになれる事」、そんな内側のケアに対して全力を尽くし、せめて業務外ではストレスを抱えさせないことが社長の責務と思っています。
昨年、当社は柏と町田に営業所を開設致しました。もちろん事業規模の拡大という思いもありますが、それよりも遠方から恵比寿本社に通う従業員のストレスを軽減したいという福利厚生的な意味合いが最も強くありました。
往復3時間の通勤時間を、営業所勤務で往復40分に短縮できたら、平日に恋人や奥さんと食事に行くことも、子供とゆっくりお風呂に入ることも可能です。
私が大切にしていることは会社の規模が大きいか小さいかではなく、働いている人間が幸せか、仕事と向き合えているのかということです。
会社を成長させたいと思っていても、規模が大きくなり売り上げが増大することと引き換えに、会社を維持していくことに神経をすり減らすような未来は考えていません。
それほど社員の就業満足については、どのプロセスにおいても最も重視するべきものだと思っています。
会社を“器”に例えるのであれば、それは決して大きくも派手でなくとも良いと思います。
“器”自体の華美を誇るより、“器”を満たす中身の濃さを誇りたい、それが私が理想とする会社の姿です。


自社だけではなく、企業全体の在り方について語ってくださった岡田社長。社員に重きを置いた経営方針が非常に印象的でした。