社員のアイデアを柔軟に取り入れた斬新な施策で、食の魅力を発信
有限会社明佑代表取締役社長 中島 三鐘
トレンドとニーズを捉えた多ジャンルの飲食業態を展開
当社は、担々麺専門店「想吃担担面(シャンツーダンダンミェン)」、杏仁クリーム専門店「天使の杏仁」、手作り肉餃子専門店「肉餃子三貴」、本場上海の本格中国料理を気軽に味わえるチャイニーズドッグ専門店「ドラゴンドッグ」という4ジャンル12店舗の飲食店に加え、通販事業、コンサル事業を手掛けています。
時流に合わせ、トレンドを捉えた新ブランドを生み出していますが、創業1962年と歴史は古く、私は4代目にあたります。飲食店の多店舗展開は、父が始めた「想吃担担面(シャンツーダンダンミェン)」をベースに、私が代表に就任してから十数年ほどの間に店舗数も業態も拡充してきました。
伝統のある企業ではありますが、決して古き良きものを守ってきただけの老舗然とした企業ではありません。現状に甘んじることなく、時代の流れを読みながらニーズを先取りしてさまざまな事業に挑戦。変化を厭わない、代々受け継がれるチャレンジ精神があったからこそ今につながっているのだと感じます。
特に近年は、社員のアイデアや意見を取り入れた新たな試みを重視しています。例えば現在手掛けている飲食業態の内、父が立ち上げた「想吃担担面」以外の3業態は、社員とのセッションの中から生まれた業態です。毎年泊りがけで開く年度方針会議の席において、今ある課題を洗い出し、それをクリアするための施策を話し合う中で挙がってきた意見が、新規事業として形になりました。


伝統ある会社でありながら、現状に胡座をかくことなく常に挑戦を続けている企業。社員のアイデアや新しい感覚を積極的に事業に取り入れています。
店舗の枠を超えたチーム結成で、全社的な視点による改善を実践
社員の声を会社の運営や事業に反映させたケースは、新業態への進出以外にも多々あります。当社では店舗や業態の垣根を超えて活発な意見交換を行うために、プロジェクトチームを結成しています。例えば接客、予算管理、マーケティングなどのチームを組み、リーダーを中心に課題と改善策について話し合うチームです。従来は店舗ごとに考えていた課題点などについて横断的に意見交換することで、店舗単位の利益追求ではなく、全社的な視野を養うことにつながりました。
最近の好例としては、1日1個ポジティブなことをグループLINEに投稿するという取り組みです。接客チームで話をしている中で「もっとみんなが笑顔で働けるようになったらいいのに」、「スタッフ1人1人が、仕事に対して前向きに取り組めるようになるためにはどうしたら良いか」といったような議題が挙がりました。話し合いの末、1日の締めくくりにポジティブなことを発信して終わるようにしてはどうかという発想に辿り着いたのです。
お客様や上司に褒められたことはもちろん、上司から注意を受けたこと、お客様からクレームがあったことをはじめ、ついつい落ち込みがちな出来事も「上司に教えられたことで気づきがあった」、「お客様からの指摘を次に生かしたい」など言葉としてプラス要素に変換することで、ポジティブな気持ちで仕事を終えることができるようになったのです。
またレギュラーのプロジェクトチーム以外にも、1年に1回頑張った人を表彰する年度方針発表会&アワードパーティーや社員旅行の実行委員会として、臨時のプロジェクトチームが結成されることもあります。近年はコロナ禍により自粛していますが、年度方針発表会&アワードパーティーのプロジェクトでは、会場や催しなども全て社員が企画。社員旅行のチームでは、新入社員がリーダーを務めディズニーでミッキーマウスを宴会に呼んだり、香港で日本では食べれない高級料理を食べたこともあります。個々の社員が、楽しみながらも会社の理念に沿うように趣向を凝らしたエンターテインメントを盛り込みながら、フレッシュなアイデア満載の旅行を企画してきました。
他社に入社した友人と職場について話をした後の新入社員からは「1年目からこんなに頭を使い、こんなに仕事を任される会社はないと実感した」、「大変だけど、やりがいがある」という声をしばしば耳にします。社歴や年齢、キャリアにとらわれることなく、誰もが会社のことを思い、そのアイデアを実現できる土壌がある。それこそが、当社の最大の強みであり、伝統なのかもしれません。
こうした取り組みは、スタッフの視野を広げ、前向きな姿勢を育むきっかけにもなっているようです。自分中心だったスタッフが周囲の様子に配慮し、積極的に仕事と向き合うようになったり、周りのモチベーションに促されて向上心を持つようになったりと、さまざまな波及効果を目の当たりにし、日々スタッフの成長を実感しています。
経営者として、従業員の成長を促すために心掛けていることは、失敗をとがめないことです。部下に仕事を任せること、挑戦させることに失敗はつきものです。だからこそ、失敗して落ち込む時間があるのなら、次はどうするべきかを考えて生かしてほしいということを常々伝えています。
私が思い描く理想の上司・リーダー像は「当人が現場にいなくても組織が回せている人」です。常日頃から、部下やアルバイトスタッフに対していかに仕事を任せられるか。安心して任せられるような仕組みを構築するか。それが部下の成長につながると共に、強固な組織を育てることにつながります。同時に、社員一人ひとりの負担を軽減し、労働時間の短縮につなげるなど、働き方改革を実現する基盤となるのではないでしょうか。


店舗の垣根を超えたプロジェクトチームにより、社内の雰囲気が活性化。年齢やキャリアに固執せず責任ある仕事を任せることで、広い視野での意見交換が行われています。
“心を満たす”という食の魅力を伝え、食文化向上の役割を担う
飲食業界はコロナ禍で大きなダメージを受けました。しかし“食べる”という行為が担う役割は、お腹を満たす、栄養を摂るということだけではありません。例えば海外で流行している食文化を日本で味わう、こだわりの食材で作る料理人こだわりの一皿を堪能する。そういった“食べる”という行為は、感性を磨き、文化の向上につながります。これからも“心を満たす”という食が果たす大切な役割を、しっかりと担っていきたいというのが当社の願いです。
もちろん働き手にとっても、飲食業界は比類のない魅力的な業界ではないでしょうか。食に携わる仕事の現場では、1日に何十人、何百人の方から「ありがとう」「ごちそうさま」という感謝の気持ちをいただくことができます。そのやりがいを感じ、店長になりたいという思いを抱く人、将来自分の店を持ちたいといった向上心やチャレンジ精神のある人は、未来へつなぐ食文化のためにも、会社として積極的にバックアップしていきたいと思っています。
食を通じてお客様へ最高の感動を提供し、感謝の言葉をいただくという何ものにも変え難い喜びを、共に味わってみませんか。


企業理念である「感謝と感動」というキーワードのもと、食を通じた心の豊かさを届ける同社。飲食業界全体の未来を視野に入れ、次世代の育成にも力を注いでいます。