社員に責任と権限を与えて、「働きがい」の最大化を目指す。
株式会社Take Action代表取締役 成田 靖也
やりがいを生み出す3つのポイントを重視する。
当社のメイン事業の人材コンサルティングでは「採用」がゴールと考えられがちです。人が辞めたり、人員が不足したりした時に採用が必要となり、離職者が多いほど仕事が増加します。20代の半ば、人材コンサルティング会社の名古屋支社長として働いていた私は、こうした現状に違和感を覚えていました。採用がゴールではなく、働きがいや定着、採用された人材の活躍を重視しなければ、本当の意味での採用支援ではないと考えていたのです。さらにある日、社内の表彰式をやめようという意見が出ました。当時はリーマンショックの影響で会社の経営は厳しい状態だったからです。しかし、厳しい時だからこそ、経営陣はがんばっている社員にねぎらいの言葉をかけ、そのがんばりを認めるべきという思いがあり、起業を決心しました。
働く人がやりがいを感じられるためには、大きく目標・責任・権限の3つが必要です。最も大切なのは、会社の目標と個人の目標の連動です。私たちはこれを「エンゲージメント」と定義しており、高いエンゲージメントを提供することが重要と考えています。「責任」と「権限」も大切です。責任があるとプレッシャーを感じますが、責任があるからこそがんばろうと思え、責任を果たすためにはある程度の権限が必要です。この3つが揃って初めて、人はやりがいを感じて働けるのだと思います。


人材コンサルティング会社での経験から、採用=就職がゴールではなく、定着や働きがいの大切さを実感。やりがいを実感できる環境や制度の充実に力を注いでいます。
責任のある仕事を通して、大きなやりがいを実感できる。
仕事を続けるためには、前述の3つに加えて心理的安全性を感じられる環境も必要です。自分がここにいて良いと思える、安心感のことです。ただし、心理的安全性を確保するために業績目標を緩めたり、失敗に対して寛容になり過ぎたりする甘い組織を目指しているわけではありません。たとえ失敗しても、次のチャンスがあり、「またがんばれ!」と言ってもらえる愛情のある厳しさが大切なのです。さらに、自分の居場所を確認できるよう、会社の仕事に貢献していると実感できる環境の整備も欠かせません。
私たちは「責任と権限を与えて働きがいを最大化」できる企業風土を理想としています。このため、役員には基本的に事後報告のみを求めます。例えば、当社ではタレントを起用したテレビCMを打っています。予算をかけた大掛かりなプロジェクトですが、タレントの選択や予算配分などについて、私はまったく意思決定をしていません。先日、初めて試写を見たくらいです。私が口を出してしまうと、責任と権限を与えた意味がなく、社員の働きがいにもつながりません。ここ数年でこうした企業風土がかなり定着して、現在では私の知らない取り組みがたくさん進行しています。もっとも、責任と権限を与えられるのは、やはりある程度のスキルがあり成果を出せる人物に限定されます。このため、社員のレベルアップを目指してマネジメント能力の向上に力を入れ、研修プログラムをしっかりと体系化しています。


マネージメント能力の向上を重視するのは、社員のキャリアの市場価値を上げることにつながると考えているからです。管理職の考え方やあり方などに関する研修には特に力を入れています。
ワクワクした気持ちを持って、前向きに働ける会社を目指す。
社員一人ひとりの価値観やライフスタイルに合わせて福利厚生も選べることが理想です。例えば、会食が苦手な社員にとって、飲み会はあまりメリットを感じられません。経営者が社員旅行に行きたいと考えても、社員にとってみればあまり魅力的ではないかもしれません。当社では、選べる福利厚生の取り組みとして、会社のクレドに基づいて社員同士がスタンプを贈り合う「サンクスギフト」を展開しています。仕事で助けてもらった際などにスタンプが贈られ、スタンプはポイントに交換してネットショッピングなどで利用できます。
また、従業員数人の時代から3か月に1度表彰式を続けています。最初は居酒屋のテーブルから始まり、コロナ禍で開催が難しい状況でも、やれない理由を挙げるより、やれるように考えようと続けてきました。働く毎日は決してワクワクの連続ではないと思います。だからこそ、3か月に1度の表彰式が社員のモチベーションになって、がんばりや仕事の楽しさにつながっていけばと考えています。この表彰式はまさに当社の企業風土を形にしたものなので、内定者や入社予定の方には必ず見ていただくようにしています。表彰式に共感していただければ、当社と相性が良いと考えられます。目標を達成しても「まだまだ」と謙虚に思える方、すごいと言われても「自分としては不十分」と思える向上心を持っている方との出会いを楽しみにしています。


株式会社Take Actionのような規模の企業にとって、外部からその社会的意義や存在価値を認められていることが必要です。社員が誇れる会社を目標に、さまざまな取り組みやトライアルを実践しています。