社員のWellness&Well-beingのために
大塚産業マテリアル株式会社代表取締役社長 大塚 誠嚴
社員の声を形にし、会社をより良く
当社は1706年の創業で蚊帳の製造・販売に始まり、壁紙、自動車向け資材、不織布成形と時代の移り変わりに合わせ、さまざまなものを作ってきました。長い歴史を紡いできた今、私が一番大事にしているのは先代先々代から受け継いできた『社員の幸せ』です。そのために従来あった改善提案制度をより活性化する方策を色々皆と一緒に考えました。その結果、今では1年間で1万件を超える提案が出てくる様になりました。
何も考えないで仕事するより、どうしたら早く出来るか、どうしたら楽に出来るかなどを日々考えながら行動すると仕事が面白くなります。その考えを改善提案として提出し認められれば、それは仕事のやりがいにつながります。そこで、私達は改善提案制度が増えるにはどうすればいいのだろうと考えました。当社においては、現在、改善提案件数の増加と業績向上はリンクしています。何故、当社の改善提案件数がそれほど増えたかというと、入り口を非常に簡単にしたことが要因だと思います。従来の制度は非常に堅苦しいもので、その改善をするとどれだけ時間が短縮できるか、いくらコストが下がるか、実施済かどうかなど、決められた項目ごとに細かく記入する必要があったため、年間数百件しか出てきませんでした。その実態を受け、改善提案制度を改める必要性を考えるようになりました。


会社のルールに縛られることなく、まずは自分で考えて動くことを大切にしています。改善提案活動の活性化は仕事をこなすだけでなく、常に考えて仕事をするという意識づけができています。
見えなかった問題と向き合うことで、見つかる気付き
提案制度改革のきっかけになったのは十数年前に行われた長浜工業会の工場見学会でした。そこでの指摘事項は、当社は中間在庫が多すぎるとのことで5Sの評価点としては最低ランクを付けられてしまいました。そこで、社長や役員などが主導となり、必要なものと不要なものを明確にし、「なぜこの材料がこんなにあるのか」「この費用は削減できるのではないか」などこれまで見えていなかった問題が浮き彫りになってきました。これらの問題を一つずつ改善していき、無駄な在庫が減り、会社として不要なものがない、より健全な姿へと生まれ変わりました。
当社はこのことをきっかけに、社員同士が話すことが多くなり、多くの無駄や仕事のやり方における疑問が明らかになり、それが改革につながって行きました。そして、上から指示を出すのではなく、それぞれの立場の視点を取り入れることで、さらに会社の業務の効率が上がり、品質の向上につながっていきました。また、それぞれのセクションの人たちと話す機会も増え、コミュニケーションも積極的に取れるようになって行きました。課題を皆で考え、議論する過程の中で新しい改善提案制度が生まれました。
ビフォーアフター方式で、改善前・後の写真のみ、人のまね、階段の滑り止めのテープが剥がれていて危険だなど、仕事以外のことや他のセクションの仕事の事もOKとしました。また、従来は実施済か否かを重要視していましたが、それも関係なくアイデアだけ、英語や中国語等の外国語での提案もOKとしました。このようにハードルを下げた結果、先に述べたように驚くような数の提案件数が出てくるようになりました。
昨日より今日、今日より明日というように皆がほんの少しずつ自分のやっている仕事を進歩させることを考えながらやっていることが結果として、「ちりも積もれば山となる」のことわざの様に非常に大きなものとなり当社が大きく飛躍できた要因だと思っています。


第三者に見てもらったことで、これまで見えていなかったことが見えるように。問題改善にきちんと取り組み、日々会社を良くすることを心がけているそうです。
目標を明確にし、社員の幸せを追求
私は社員に「会社をどうしていきたいのか」を明確に伝えるように心がけています。よく「社長の考えがわからない」といった声が出てくることで、社員の働くモチベーションが低下し、全員の目指すベクトルが定まらないということを耳にします。そういったことを避けるため、自分の言葉できちんと伝えることを意識しています。その結果、全員の心に思いが届き、同じ目標に向かって突き進むことができています。また「One Ohtsukaでいこう」という思いを掲げ、みんなが幸せになる会社作りを目指しています。そのために、目標を明確にし、情報共有を徹底し役割を作って、コミュニケーションを取ることを大切にしています。理由として、社員が幸せを感じることで、ストレスなく仕事に打ち込め、その結果、お客様へのサービスの質があがり、自分の成長へとつながります。満足は数値化されるものですが、幸せは人によってとらえ方が異なるため数値化できるものではないと私は考えています。そのために、日々会社が良くなるように考えて行動しています。
これから就職する人に伝えたいことは、目標を見つけてほしいということです。ただ、目標を掲げるだけでなく、文字に起こすことが大切です。これこそが成功への近道。自分がやりたいこと、興味のあることを見つめなおす機会が就活です。この時間をないがしろにしてしまうと、人生損してしまいます。自分に与えられた限りある時間の中で、何をするのか、目標達成のためにはどう動くのかを考えることを大切にしてもらえたらと思っています。


社員一人ひとりの幸せが結果として、自分の成長へ。社員全員を幸せにすることは容易なことではないように思えますが、さまざまな取り組みをして会社の未来を作っています。