働きやすさを整えながら、職員一人ひとりの責任感を育てる
社会福祉法人いずみ苗場の会園長 藤田 淳志
サポート体制の確立で残業時間を削減
当園では、保育実務に加え書類や計画準備などを行うサポートの職員を配置しています。この仕組みを整えたのは、職員の働きやすい環境を作りたいと思ったのがきっかけです。これまで、クラス担任の職員は勤務時間中は子どもの生活を見守ることに徹し、残業時間に事務作業を行っている状況が続いていました。クラス担任の職員以外が書類を書いてはいけないという決まりはありませんでしたし、日誌や翌日の準備の業務を分担するようにしたのです。しかし、この体制を整えるまでの道のりは簡単なものではありません。今も改善中です。職員は全員「子どもが好き」という思いを抱いてこの仕事を選択しているため、実際のところは事務作業が苦手な職員もいます。そうはいっても持ち帰り残業や休日勤務をしてほしくないという思いを伝え続け、3、4年の時を経て職員の理解も得ることができ、この仕組みが動き始めました。
現在ではクラス担任だけが子ども達の様子を知っているという状況ではなく、全体の職員が把握できるよう、一人ひとりがアンテナを張って日々の業務に励んでいます。クラス担任の職員が自分の子ども達の事を他のクラスや職員に伝えようとする姿勢が大切です。
これらが形になる一方で、徐々に次の課題も出てきています。業務の分担はしているものの、それぞれの希望の時間に現場に入らせてあげることができていない現状があります。今後は時間帯や誰をどこに配置するかというルールを考えながら、一人ひとりの働きやすさを構築していきたいと考えています。


どんな職場においても報告・連絡・相談が大切だという藤田園長。園長自身が他園の先生からの話を聞いて学びながら、職場づくりに奮闘されています。
経験させることがそれぞれの責任感を強くする
働き方の部分を改善する一方、最近では、園内組織の逆ピラミッド型の構築も進めています。現場がメインで動き、少しずつ色々な経験をさせたいという思いがあるからです。具体的には、中堅職員をフリーポジションにおいてクラスリーダーをサポートして主任がその中堅職員をサポートするという形をとっています。
組織を変化させることで、トラブル対応も中堅職員に任せるようにしています。これまでは園内で起きた様々なトラブル対応は全て私が対応していましたが、私一人で対応していると、私が不在の際は対応ができなくなってしまいますし、少しずつ他の職員に任せていくことが大切だと感じています。慣れないうちはトラブル対応に苦労するかもしれませんが、人と人とのかかわりの場である保育の現場だからこそ、それぞれが当事者意識を持って関わることが大切です。例えば、子どもがケガをしてしまった場合の対応も、しっかりと親の気持ちになって医者の話を聞き、それを保護者に伝える。その上で、こちらが真摯に対応する旨を伝えれば、保護者からの信頼も得られると考えています。
このような逆ピラミッドの組織を作る事で、責任感を持つ職員が増えたと思います。大変さを感じる事もあると思いますが、それぞれのサポートとなる職員と話し合いながら、その都度課題をクリアにしていく姿が見られるようになりました。経験を通して新たな気づきも得られますし、そこで成長してほしいと思っています。実際に、運動会や卒園式などの大型行事の準備も主任だけでなく現場の職員が積極的に動くようになりました。任せる事で責任をもって最後までやり切ろうという気持ちも感じられますし、がんばれる職員がいるというのを気づけたことも、私にとっては喜ばしいことでした。


職員が日々感じる課題に早く対応できるよう、各クラスの課題を記載するノートを設けているそうです。各クラスの課題に対して、どのような対応をしているかを藤田園長は直接ヒアリングされています。
子どもたちにとって第二の家であり続けるために
業務の分担や組織の再構築を進める一方で、そもそもの仕事の中身について見直す必要性を感じています。日誌で言えば監査を通るための記録を書いていては意味がないですし、どのような内容であれば、職員のためになるのかを明確にする必要があります。私自身、日誌は書かなくてはならないというものではなく、職員のやるべきことが整理できさえすれば良いと思っているため、そういった書類関係をもう少しコンパクトにしていきたいと思っています。これまでも記載箇所のサイズを変更して職員の負担を減らすなど、試行錯誤を繰り返してきました。今後も常に出てくる課題と向き合いながら、職員が働きやすくなるための環境づくりを続けて参ります。
私たちが目指しているのは、子どもたちにとって第二の家のように落ち着くことができ、そして時に挑戦を促すことができる環境を作ることです。大人があれこれ指示をだして子どもたちに経験をさせるのではなく、子どもが何を求めているかを把握し、それを大人の知恵や力で一緒に形にしていく保育が大切だと考えています。こういった考えを持つ方であれば大歓迎ですし、このベース作りをしたいと思う方であればご活躍いただけるはずです。
当園の想いの中心に「すべての人々はこの世に必要があって生まれてきている」という根本的な考えがあります。この想いを基に、大人も共に成長できる環境づくりをしていきます。大人は子どもから日々学ぶことも多いでしょう。園生活を通して、子どもだけでなく自分自身を成長させたいと思える方と、一緒に働けることを楽しみにしています。


「今やっていることに疑問点や課題を持ち、仲間と共有しながらクリアにしようとする姿勢がある人と一緒に働きたいです」と語る藤田園長。人懐っこい子どもを育てるために、職員自身にも素直であってほしいと考えられています。