キャストの価値を高め、共に成長していく
株式会社CLOVER代表取締役 兼 CLOVER GROUP CEO 香丸 俊幸
働きやすさを実現すれば、ゲストにもそれが伝わる
私は経営者として、キャストには当社で働き続けてほしいという思いがあります。しかし、そうはいっても現在では終身雇用制度もなくなり、一生一つの会社で働き続けるということは難しいかもしれません。そんな中でも「こういう会社を創りたい」「こういう介護をしたい」という私の思いを実現してくれるキャストへ感謝の気持ちと、当社での経験をステップに次のステージへ目指してほしいという思いを体現するために、当社では様々な制度を整えています。
現在では副業の許可や、昼食の無料支給、年に一度の社員表彰、産休・育休制度など介護業界では珍しい制度を数多く取り入れています。中にはキャストからの提案で実現した制度もあり、その中の一つが子連れ出勤OK制度です。当社がある世田谷区は待機児童問題が深刻で、週5のフルタイムで働いていなければ入職は難しい現状があります。少しでも働くママキャストと子供にとって優しい会社にしたいという思いを込めて導入しました。この制度はキャストの働きやすさの実現だけではなく、介護施設のゲストにも良い影響をもたらしています。現場に子供が来ることで、これまで笑顔の少なかったゲストも笑顔になり、時には重い荷物を持てなかったゲストが子供を抱っこしている姿も見られるようになりました。キャストだけでなく、ゲストにとっても機能維持向上の役目を果たしているのです。子供にとっても母親にとっても子供を可愛がってもらう事は自信につながりますし、子連れ出勤は会社全体の雰囲気を明るくさせてくれました。
このようにキャストのために何かをしてあげたい、という私の想いは、私の母親から伝わるものかもしれません。私の母親は居酒屋を経営していて、お客様に対する思いを非常に強く持っていました。その中で育ったからこそ、人に喜んでもらえるようなことや相手にとって利益になるようなことを考える習慣が根付いているように思えます。


副業OKは創業当初から取り入れている制度の一つ。介護だけでなくプラスアルファの武器を身に付ける事で、人としての価値を上げてほしいという思いが込められています。
一人ひとりが意見を言い、理想の介護を実現する
さらに、当社では資格支援制度を設けています。介護施設では初任者研修を取得していなければ、基本的には面接もしてもらえません。しかし、当社の場合は経験がなくても入社する事が可能です。国としても介護福祉士のなり手がいないという部分が課題になっているため、意欲のある人にはぜひチャレンジしてほしいという思いがあります。未経験でもできるというチャンスを与える事でその人の可能性が広がりますし、モチベーションにもなると考えているのです。
当社では経験問わず多くのキャストが活躍しています。基本的にはキャストの意見を基にしたサービスを展開していますし、それぞれの個性を生かせる環境です。実際に、最近ではコロナウイルスの影響を受けてゲスト自作のマスクを子供たちに販売したり、美大出身のキャストのデザインでトートバックを制作しています。ゲストにとっては、人の役に立っている、貢献しているという前向きな気持ちを抱いてもらう事が活力につながるはずです。自分たちが作ったものが社会に出て、役立っているという事実はやりがいにもつながりますし、大変好評の声が上がっています。
キャストからの意見の中には斬新なものも多々あります。例えば、ゲストと回転寿司屋に行くというプランや、ドライブでゲストの生まれた地元へ行き、母校巡りをする事もあります。高齢になると家に一人でいるほうが心身共に不調になってしまうものです。それを踏まえた上でキャストが寄り添い、話をし、それぞれのペースで体を動かすことが元気の源になります。資格や経験はもちろん大事ですが、ゲストにどうやったら喜んでもらえるのかを考えて、周囲の幸せを願える人が活躍できる環境です。


ゲストは人生経験が豊富な方が多いため、やりたいことを尋ねても基本的には「ない」という答えが返ってくるとのこと。そのなかでも各個人のアセスメントや歴史を踏まえた提案をすることが大切だそうです。
自由に発信できるからこそ、ある程度の統一感は必要
福利厚生を整える一方で、やはり課題となるのは充実している制度と仕事内容とのギャップです。認知症のゲストと接する事もあるため何度も同じことを伝え直さなくてはならないですし、時にはゲストから厳しいお言葉を頂くこともあります。このように業務を経験していくにつれて、入社前とのギャップを感じられてしまう方が多いのも事実です。そんな時こそ、当社で大事にしている“美点凝視”という言葉を思い出し、相手の良いところを見つけ、キャスト同士がフォローし合えるようになってほしいと思っています。
また、事業所ごとの明確なルールを再設定する必要も出てきました。以前までは入社間もないキャストの不安を拭うためのコミュニケーションのタイミングや、個人面談を行う期日をある程度明確に定めていたのですが、規模が大きくなるにつれ、実行している人とそうでない人の差が明白になっています。良い意味では権限委譲を進めているともいえますが、バラつきが出てしまっているのも事実です。会社としての方針は同じでも、各事業所によってサービスコンセプトやルールが異なるため、今後はそれぞれの意見を取り入れつつもある程度の仕組み化をしていこうと思います。
当社で求めている人物像は、素直で勉強熱心な方ですが、それだけではなく様々な部分にアンテナを貼れる方と一緒に働けたら嬉しいです。私自身、コンサルテイング会社出身ということもあり、仕事の仕方や考え方を学ぶために様々な本を読んでいます。このようにインプットする力をキャストには付けてほしいと思いますし、今後は教育カリキュラムの一つとして入れていこうと思っています。介護業界には類を見ない教育体制に興味があり、自身の価値を高めたいと考えている人と働ける事を楽しみにしています。


「人が悲しんでいる時には一緒に悲しみ、幸せな時には一緒に喜べる人と働きたい」と語る香丸社長。香丸社長自身のご両親がお互いの幸せを第一に考えられている関係性で、その考え方が社長ご自身の根底にあるように思えました。