社員同士のコミュニケーションが、職場全体の環境を作る
株式会社ヴィクサス代表取締役 片倉 秀行
一人ひとりに合った仕事を作り、いつでも戻れる環境へ
当社は株式会社ヴィックスコミュニケーションズのグループ全体での取り組みと、当社独自の制度の2パターンを設けています。グループ全体として取り組んでいるのは、育休・産休が取りやすい環境作りです。当社は携帯販売の仕事がほとんどのため、現場での勤務が必然的に多くなります。そうすると、子供の病気で早く帰宅しなければならない時も、業務を受け入れられるメンバーがいなければ対応することはできないでしょう。そこで、当社では時短勤務を前提とし、育休後の復職希望を受けた際には、現場以外の仕事を作っています。基本的には総務関連の仕事がほとんどで、営業が担当していた請求書の作成や、社員が地方へ遠征する際の手配を依頼しています。実際に、以前まで携帯販売に従事していた社員が、復職後は総務として時短勤務を利用しながら働いていますし、当社の人事の役員も2児を出産して復職しています。
さらに、当社独自の制度として、2020年にフレックス制度を導入しました。勤務時間を短縮することで社員の働きやすさを向上する目的もありますが、それだけではありません。一番の目的は、社員同士の距離感を縮めることです。何かを伝えるにしても注意をするにしても、近い距離感を保ち続ける必要があります。普段から距離感の近いコミュニケーションをしていれば、注意された側も、その言葉の裏側に隠された本心を感じ取ることができるでしょう。当社では、フレックス制度を導入することでチームメンバーには17時に帰宅してもらい、飲みにいくなどのコミュニケーションを図ってもらいたいと思っています。ハッピーアワーの時間帯から飲むことで安く済ませられますし、長い時間を使って交流を深められます。今まで知らなかったお互いの魅力を知ることができますし、相手からも一歩踏み込める機会になると考えているのです。


グループ全体では第三月曜日の出社時間を10:30に設定されています。日曜日の夕方に、翌日の出勤の事を考えて気分が落ち込まないよう、満員電車を避けられる時間に設定しています。
いつでも利用できる社宅制度で、距離を縮める
また、働きやすい環境づくりのために社宅を用意しています。通称“ラボ”と呼ばれるこの社宅は、社員だけでなく、インターン生も含め誰でも宿泊可能な施設です。実際に住んでいる社員もいますし、その場合は家賃の一部を会社が負担しています。現在は4LDKの家を中延に2軒、池袋に1軒、世田谷には女性専用ラボが1軒あります。
これらの社宅は、インターン生が毎回通勤する度にかかる交通費やホテル代を少しでも減らしてあげたいという思いから取り入れました。そのほかにも、当社では地方学生を多く採用しているため、彼らの生活を支えるといった目的もあります。入社のタイミングで一人暮らしをはじめると、莫大な初期費用がかかってしまうでしょう。しかし、ラボにはすでに家電が揃っているため、一部の家賃と光熱費のみで生活ができます。実際に、社員であれば誰でも利用できる施設なので、忘年会の後に終電を逃した社員が集まり、リビングで20人程寝ているという話を聞いた事もあります。知り合いがいない土地への上京に不安を抱える方も多いとは思いますが、ラボを利用することで入社前から社員との交流を深められます。これは今後も続けていこうと思います。
また、社員の距離感を縮めるものとして、毎年、社員旅行を行っています。単なる社員旅行ではなく、二年に一度、パターンの変更したもので、ある時は社員同士の交流を重視した旅行で、体育館でのバスケや大縄跳び、玉入れなどのスポーツ大会を行い、旅館ではクイズバトルを行いました。また、ある時は韓国や台湾の観光や、ゆったりとした温泉旅行、さらにはコテージを利用して社員のご家族を交えた旅行をすることもあります。このように、当社の取り組みや制度には全て、人とのつながりを重視するという思いが根底にあります。今後も社員全員が働きやすくなるよう、“人”という部分はぶらさずに、良いと思う制度は取り入れていきます。


社員が誰でも意見を言える「チャレンジ宣言」も取り入れられています。若手社員の発信に真摯に向き合いたいという考えから、役職関係なく、発信した社員に対しては必ず部長以上のメンバーが回答しているそうです。
ただ仲が良いだけでなく、切磋琢磨できる関係を
今後は、数字に対する意識をより一層高めていかなくてはなりません。目の前の業務に追われると、自分の事で頭がいっぱいになってしまうでしょう。会社で掲げている目標をしっかり理解し、自分が追うべき数字を再度認識することでモチベーションを高めていただきたいと考えています。また、仲が良いからこそ、全力で叱り合えていない環境があります。友達のように仲の良い関係で終わらせるのではなく、お互いを刺激し合えるようになれば、さらに成長できるはずです。
そのためにも、最近では会議の進め方を変更しています。全員が集まる月初会議では、私たちが前月の数字を伝える、単なる発表会のようになっていました。そこで、参加者全員にとって意味のある時間にするためにも、発表内容を前日に全社員に共有し、それに対する質問を一つ考えてもらいました。すると、次の会議では自ら手を上げて発信する社員はもちろん、こちらから指名した際に答えてくれる人が増えたのです。全員が当事者意識を持ち、数字はもちろん、周囲の様子を気にかけながら切磋琢磨できる関係性を築いてほしいです。
私自身も社員を一人にさせずに、全員との近い距離感を保つ努力をしてまいります。実際に、社員とはお酒の席で仕事の話だけでなく、たまには趣味の話や恋愛の話を交えながら、少しでも楽しんでもらえるような工夫しています。今後もこのように各社員に合った対応を心掛け、成長できる関係を作りたいと思います。


「距離が離れてしまっている社員は、徐々に会社からも離れてしまう」と片倉社長は話されています。近い距離感を保つためにも、社長から社員に声をかけ飲みに行かれることが多いのだそうです。
片倉 秀行 プロフィール
慶應義塾大学を卒業後、大手通信企業を経て、ヴィックスコミュニケーションズに入社。
入社当初はモバイルを担当し、全国1位獲得などの実績を積む。
その実績もあり、2016年より株式会社ヴィクサスの代表取締役に就任。
1人1人が自分で考えて動ける組織、その基盤として考えられる人を育てることを意識している。
趣味はゴルフと野球観戦と筋トレ。
座右の銘は「衣食足りて礼節を知る」。