唯一無二の取り組みで、IT業界に旋風を巻き起こす
株式会社ボールド代表取締役 澤田 敏
仲間を見つけられる月に一度の帰社日
当社はIT業界における“ネガティブな要素”を払拭し、全てのエンジニアが定年まで働ける未来を創造しています。私自身はIT業界の出身ではありませんが、当社の前身となる事業でIT業界に足を踏み入れた時、現場で働く40代以上のエンジニアが少ない事に気付きました。巷で囁かれているエンジニアの「35歳定年説」を、身を持って痛感したのです。エンジニアが技術力ばかりを求められる、技術力偏重の傾向があるこの業界では、どれだけキャリアを積んでもビジネスパーソンとしての能力(いわゆる「人間力」)を身に着けることができません。結果として、年をとればとるほど、次第に技術的に立ち上がりの早い若手に取って代わられてしまい、業界に居場所がなくなってしまう人材が沢山います。私はこのIT業界の“当たり前”を覆すべく、エンジニアが使い捨てにされず、定年まで現役で活躍し続ける業界を作るべく、当社を立ち上げました。
生涯、エンジニアとして活躍するためには、現場で必要とされるスキルや能力を磨き続けなければなりません。そこで、当社では毎日20時~22時に外部講師を招き、『感動大学』という勉強会を開催しています。これは、エンジニアに必要とされる基本的な技術からコミュニケーション能力、マネジメント能力などの人間力に至る内容を学習できる講座です。この時間帯からの勉強は、日々の業務を終えたばかりの体に鞭を打つようなもの。少ない人数では参加社員のモチベーションも低下しますし、相当な意欲が必要です。
そこで、月に一度の帰社日『BOLDay』の実施を重ねたことで、感動大学の参加者が増加しました。この『BOLDay』は単なる業務報告会のような帰社日ではなく、講師を招いたグループワークの実施や、自分たちの意見を発信し合う場として活用しています。様々なコンテンツを用意し、社員同士のコミュニケーションの場を増やすことで、お互いの新たな一面を見つけることができるのです。年齢や自宅が近いというプライベートな発見から、目指している資格が似ているなどの業務にまつわる共通点を感じることで、切磋琢磨できる仲間を見つけられます。それにより「自分も努力をしなくてはならない」という意識が芽生え、感動大学の参加率が向上したのです。現在では毎日20名~30名が感動大学に参加しています。


『感動大学』の参加者が増えた要因は他にもあります。社内SNSへ参加予定メンバーの名前を公開することにより、周囲の社員の心に火をつけているのだそうです。
“期限付きの目標”で、より高みを目指す
感動大学や勉強会を通した学習はもちろん、努力に対する評価制度も欠かせません。当社の場合は、三つの項目に基づいた“期限付きの目標”を社員自らが定めています。一つ目は“自己研鑽”。これは自分を磨くための資格や研修など、能力を高める内容です。二つ目は“顧客満足”。お客様の満足度を高めるために必要な行動を考えてもらいます。そして三つ目は、“他者に影響を与える事”。例えば、後輩社員に技術を指導する『技術勉強会』で講師を担当し、複数名の資格試験の合格を目指す、といった内容です。これについては仕事以外の内容でも構いません。会社をより良くするための努力であれば評価の対象となります。
これらの項目に基づいて定める目標は、高いものから簡単なものまで、各個人のレベルに応じた内容を決定することが可能です。現実的でないあまりにも高い目標は意欲を削いでしまうからです。そして、その目標に対して私たちは、「どの程度の難易度の目標を何%達成したら、どのような評価がつくのか」「達成したらいくら昇給し、どのようなチャンスが得られるのか」など、ゴールを包み隠さず開示しています。私自身がサラリーマンの時に、達成後の未来像が明確でなければ頑張り続けることは難しいと感じていたので、このような評価制度の導入に至りました。
また、目標達成を目指すにあたり、全社員が『専任コーチ制度』を活用しています。この制度は大手企業での経験を重ね、役員や部長クラスの経歴があるアクティブシニア層をコーチとして再雇用し、社員とマンツーマンでの面談を行うものです。意外にも“期限付きの目標”を立てたことがない人は多く、どんなに優秀な社員でも、一人で明確な目標を立てることはむずかしいものです。そこで、コーチが伴走してアドバイスをすることで、徐々に一人で目標を立てる力が身に付くと考えています。


面談の内容は各コーチが澤田社長に直接、報告書を提出しています。澤田社長が直接社員と面談をすることはなくても、間接的に全社員の状況を把握されています。
規模が拡大しても、社員とのコミュニケーションは欠かさない
様々な制度の導入や近年の拡大スピードにより、年々入社してくるメンバーの能力と意欲が向上しています。逆に言えばこの状態をさらにブラッシュアップさせていく必要があり、いかにしてそれを実現するかが今後の課題です。2019年入社の新卒は、当社の『感動大学』や『技術勉強会』があるにも関わらず、毎週金曜日に自分たちで勉強会をしていました。勤勉なメンバーが多いからこそ、周りの社員にも影響を与えていますし、主体的な行動が多く見られます。
この考え方と行動を全社に浸透させるためにも、私自身が社員とコミュニケーションを図っています。たとえば、『社長が社員を祝う会』では、私が各月の誕生日のメンバーを祝います。毎月30人ほどが集まり、全員と会話をすることで会社に対する要望や、現場の悩みを吸い上げています。その場で解決できることは私自身が対応し、それ以外の意見は会議へ上げ、良いものを会社に取り入れるようにしています。さらには毎月『BOLDay』の後にくじびきで決定した参加者と食事に行く『サシサトシ』も行っています。社長が社員を祝う会よりも少人数で食事をするため、一人ひとりと向き合える場です。当社くらいの規模になると、「自分の意見は社長に聞いてもらえない」と思われがちですが、私は一人ひとりの意見に耳を傾け続けたいと考えています。意見を取り入れ、制度などへ反映することで「自分たちで会社をつくっている」という意識を持ってほしいのです。IT業界はネガティブな印象を持たれてしまうことも多くありますが、それを覆す新たな挑戦をしたいと考えている方と共に働きたいと思います。


「今の状態がベストだとは思っていないので、より一層高めていきたい」と語る澤田社長。社員の働きやすい環境づくりのために必要な施策は順次取り入れたいとお考えです。