工数管理の導入で、社員の意識とサービスのクオリティを向上させる
アウル株式会社代表取締役 兼 COO 瀬戸 大輔
業界では珍しい工数管理を取り入れ、働き方改革を推進
私たちPR業界は、一度のプレスリリース作成と配信、メディアへの掲載依頼の回数など、それぞれの一連のアクションで価格が設定されるパッケージ価格であることがほとんどです。当社も、以前はそうでした。しかし、実際の業務に目を向けると、一つのプレスリリース作成が1時間で完了する内容もあれば、10時間近い時間を要する内容もあります。金額が同じにも関わらず、社員の工数ばかりが増えてしまうという矛盾が生じていたのです。
そこで、当社では2018年の8月から「工数管理」を導入しました。これは以前のように、サービスごとのパッケージ価格を設定するのではなく、稼働時間に応じた契約を締結する仕組みです。これらは、想定工数内で納品させる目的に加え、社員がそれぞれのタスクに、どのくらいの時間をかけて良いのかをひと目で理解できるようになりました。未経験者やキャリアの若い方は、一つの業務にかける適切な時間がわかりません。しかし、目標工数を事前に開示することにより、自分が要した工数との比較ができます。そして、会社で定められた工数を大幅に上回ってしまった社員には、その原因を分析し、会社としての対策とスキル向上を図ってもらいます。
これらの工数は全て、各社員が管理シートへ入力する事で可視化しています。そして、毎週行う「よもやま」という1on1ミーティングで、各案件にどの程度の時間を要しているのかを擦り合わせます。このミーティングは、共同代表の北村と私が手分けをして、各社員の課題点をヒアリングする絶好の機会です。過去工数と未来工数の二つを精査することで、先週一週間の案件にどのくらいの工数を費やしたかを明確にし、翌週以降に発生見込みのあるタスクの量を把握しています。これらを定期的に行うことで、慢性的な残業が起こっている場合は改善方法を共に考え、一人ひとりの負担を削減しています。


各案件の進捗は、グリーン、イエロー、レッドで振り分けているそうです。想定時間内をオーバーしそうな案件(イエロー)が出た段階で、役員やマネージャーが確認し、案件の進捗を整えられています。
意識改革だけじゃない!残業時間の削減で働きやすい環境へ
社員の働きやすさを重視したこの「工数管理」ですが、お客様からの理解は完全ではありません。昔からご契約いただいているお客様に、工数契約に切り替えるというお話をしても抵抗を感じられてしまうことも事実。そのため、現段階ではまだ、一部の案件を工数管理に移行できていません。この契約方針をご理解いただき、全案件に浸透させていくためにも、お客様には稼働時間の途中経過を逐一報告し、先を見据えたリソースの確保状況をお伝えしています。そうすることで、お客様ご自身で対応するものと、当社にお任せいただく専門性の高い内容を早い段階でお客様自身が分別できるのです。このような形をとることで、お客様とは一つのチームという意識を持ってプロジェクトに取り組んでいます。
一方、工数管理をしたことで、社員たちにセルフマネジメント能力が身につき、自分の業務を管理する自発性が生まれました。また、一つの案件に対する集中力が高まったことで残業時間が減少し、各成果物のクオリティも向上したのです。さらに当社では、短時間で優れたサービスを提供するためにも、アウルアカデミーという社内大学での研修コンテンツを設け、能力開発を図っています。以前までは毎回、講座を開催していたのですが、現在は場所や時間を問わないeラーニングの形で各コンテンツを配信しています。新入社員を含めた全社員が映像を見る事ができるため、社員間の知識に差が生じません。ここでは専門的な知識だけではなく、当社のビジョンの目的や、私たちが今まで培ってきたメソッドをお伝えしています。以前よりも、会社に対する理解や帰属意識を深めることができていると実感しています。


瀬戸COOご自身もアウルアカデミーで講師を担当されています。過去には、ファシリテーション研修を行い、営業や会議においての進行管理やどのようにゴールに結びつけるのかという、ファシリテーターとしてのスキル勉強会を開催されています。
現場の意見を反映し、一人ひとりが輝く会社へ
多くの福利厚生や仕組みを整えている当社ですが、様々な制度があるからこそ、理想と現実が融合している現状があります。例えば、評価制度。これに関しては改善の余地が大きくあると考えています。現在は、MBO(目標管理制度)の中に、キャリアミッションという考え方を取り入れています。これは評価基準となる“成果”以外に、“能力”や“態度”の二軸を加え、自分の現在と今後のポジションがどのような状態であるべきかを言語化したものです。これらの制度は2019年の3月に取り入れたばかりなので、今後も細かくブラッシュアップするとともに、社内に浸透させていくことが急務です。
さらに、今後は企業統治にも注力していかなくてはなりません。以前までは一人の営業が受注から納品までの一連の流れを担当していましたが、現在は分業制にしています。そのため、様々なセクションと関わりながらプロジェクトを遂行していくので、組織として多面的な制度を策定していく必要が出てきました。実際に、現場から「どのような仕組みがあれば働きやすいのか」という意見を吸い上げ、反映しています。過去にはリモートワークなどの働き方も制度として実現し、現在も続いています。このように社員の意見と経営陣の思いを合わせていくことで、組織としての厚みが増すのではないかと考えています。
当社は「私たちが輝き、社会が輝く」というビジョンを掲げています。このビジョンを実現するためには、一人ひとりが一生懸命仕事をすることで自分が輝き、他者に良い影響を与えていただきたいと思っています。そうすることで、お客様から常に感謝されるようなパフォーマンスを発揮することができ、業界全体の改革、さらには社会の革新につながると思うのです。このビジョンを実現するために、しっかりした教育体制や仕組みを整えて、社員にとって“輝いた会社”であり続けられるよう、尽力していきます。


「今後は、360度評価や180度評価など、上長や同僚から見た評価を取り入れて、本人のスキルや能力の棚卸しを進めていけたら理想的です」と瀬戸COOは期待を胸に語っています。