“オープン”にすることが、会社の結束力を強化する
株式会社フルアウト代表取締役 金田 和也
社長自らが一人ひとりの目線に立ち、求めているものを実現
当社は『世界のロールモデルとなる会社をつくる』をビジョンに掲げています。一見、格好良く見えるこのビジョンは、新卒社員から「どういう意味なのか」「ロールモデルって何なのか」と問いかけられることもしばしば。実はこのビジョン、あえて定義をしづらくしています。自分が世界のロールモデルになるにはどうしたら良いのかを、考えてもらうことを目的にしているのです。しかし、最近ではその答え自体の定義が定まらないということが出てきました。
そこで、当社では『OKR』という目標管理方法を取り入れました。オブジェクティブ(目標)を定め、それに対するキーポイント(成果)を設定した上で、達成に向けた目標設定を明確にするためのものです。経験者であれば知識や経験を通じて考えることができますが、新卒社員は経験が少ないため、目標設定すらも大変だと感じてしまいます。そのため、新卒社員は毎週末に『1on1』という面談を各上司と行なっています。これは売上や進捗に関するものではなく、目標設定に向けたプロセスに関しての考えや、プライベートで悩みがないか、など社員の困っていることを吸い上げるためのものです。ただ面談をするだけでなく、当社のツールを用いて誰がどのような面談をして、どのような状態にあるのかをオープンにし、社員全員が一人ひとりの様子を把握できるようにしています。
さらに、毎週月曜日に各部署で『チェックインミーティング』を行い、一週間をスタートするにあたっての不安や不満がないかを話し合っています。ここでは誰も風邪をひかない、遅刻をしない、などの小さな目標を設定しています。そして、毎週金曜日に行う『ウィンセッション』では、今週一週間の自分が成長したポイントを1分30秒ほどで発表し、そのスピーチに対して参加者の感じたことを話してもらいます。


「これらのミーティングは、目標としていたゴールにたどり着くことができなかったとしても、自分を称賛できる実績や形を見つけてほしいという思いから取り入れました」と金田社長は話します。結果だけで本人のモチベーションを左右しないようにすることが目的だそうです。
全員の人生を把握する画期的な取り組み
これらの制度は、2019年4月から取り入れました。この一年で社員数は20名ほど増加し、今では40名を超える規模になっています。以前までは社員が落ち込んでいるときには直接私がランチに誘い、話をすることが多くありました。しかし、私ばかりが話をしていても現場の社員間で解決できない組織になってしまうのではないか、と感じるようになりました。会社全体の組織を構築していくためにも、現場内の上司と社員が話し合って解決していく必要があると考えを改めたのです。
この現場内でのミーティングを取り入れることで、以前よりも社員からの意見が増加しました。定期的に自分自身を見つめ直すきっかけになり、悩みを自己解決できる社員も増えたように思います。私自身にとっても、若手社員にどう向き合うべきかを考える機会になりました。「テレアポでガチャ切りされた」と悩んでいる社員がいれば「こうすればいいと思うよ」とアドバイスするのではなく、まずは自分自身の営業時代を振り返り、「自分もそういうことあったよ、そういうときはこうしていたよ」という共感と実体験を交えて伝えることで、社員の改善に対する意欲を向上させています。
また当社では社員同士の交流を深めるために、なるべく多くのことをオープンにしています。たとえば、『ライフライン』。これは、新入社員が入社したときに、生まれてから現在までの人生を振り返る『モチベーショングラフ』を作成し、発表してもらうものです。これを取り入れたのも、会社が危機的状況に陥った2017年、私が社員一人ひとりと面談をしたことがきっかけです。私の率直な思いやそれぞれの社員に対して思っていることなどを包み隠すことなく、全て洗いざらい話しました。そうすることで徐々に会社としての結束が強くなるのを感じたのです。『ライフライン』を発表する社員は自分の中で気持ちが整理され、より次のステップに向かっていけると感じることも多いようです。


社員総会にも力を入れている金田社長。上層部だけで全てを決定せず、社員も参加させることを大切にしているそうです。社員からの意見を反映できないことがあれば、できない理由を包み隠さず話されています。
本気を見せることで、社員と共にフルアウトしていく
私は面接の際に、まずは本人の将来の夢を聞いています。将来のビジョンと今後のとるべき行動がマッチしているかを確認しているのです。そして、それらが綺麗ごとになっていないかどうかもチェックしています。たとえば、ボランティアサークルに入っていた子に入部のきっかけを聞いたとき、「勧誘してきた先輩が美人だった」と、言いにくいことを素直に伝えられる子を採用することが多いです。私自身の起業のきっかけも憧れからでしたし、稼ぎたいという思いが強い時期もありました。不純な動機は、想像しているよりも悪くありません。その先に新たな目標を見つけてもらえれば良いと思っています。その素直さに能力が身に付けば、当社の幹部候補として会社を任せられる存在になるのではないかと思います。
現在、広告代理事業を行なっている当社ですが今後は高収益モデルの構築にも取り組んでいきます。そのなかでも私は“モノづくり”を中心にしていきたいと思っています。ただお客様にサービスを“届ける”だけでなく、“自分たちがつくったものを届ける”という全てのサービスを提供していきたいです。しかし、現在はその方法を検討している最中。形として存在していない以上、まずは社員に、私の本気さを見せていくしかないと思っています。課題でもありベンチャーの宿命でもありますが、見えない世界を一緒に走ってもらいたいですし、社員に「この人についていけばどうにかなるだろう」と思ってもらうために尽力しています。そして、日本だけの商売だけではなくアジアに進出し、グローバル展開を進めていくモデルケースになることを目指していきます。


外国人の採用にも力を入れている株式会社フルアウト。現在、ベトナム人、中国人、韓国人、台湾人が勤務しており、今後はモンゴル人やタイ人、ミャンマー人が入社予定だそう。「当社のなかで共存共栄をしていきたい」と金田社長はクロ―バル化を邁進します。