自社制度の整備から、IT業界に変革を起こす
株式会社ボールド取締役 経営戦略本部長 福井 克明
入社3カ月で経営計画を作成?!新卒がつくる会社の未来
当社はIT業界における人材教育と雇用問題の刷新を目的としています。近年、大手のSIや派遣のSES会社で従事しているエンジニアが多く、その方たちの労働環境や雇用のあり方が大きく課題となっています。エンジニアはプロジェクト先に常駐していることがほとんどなため、会社への帰属意識が薄れています。また、若いうちに技術力ばかりを叩き込まれ、40歳を過ぎた途端、技術以外のマネジメント力や思考力といった“人間力”が不足しているエンジニアが追い出されている現状もあるのです。当社ではその部分に問題意識を持ち、定年までIT業界の最前線で働き続けられるよう、業界全体の変革に取り組んでいます。
業界を変えるという大きなビジョンにアプローチをしていくためには、会社のかじを取る総合職の全員が同じベクトルで働く必要があります。そこで、総合職の社員には入社3カ月後から『中期経営計画策定合宿』に参加してもらっています。若くして幹部職として活躍してもらうためには経営の根幹でもある、中期計画の策定プロセスを経験させ、その意味を理解してもらうことが効果的であると考えたのです。毎年7月に行われるこの合宿では、昨年の業績の分析から自分たちの目指すものを明確にし、実現に向けたアイデアを出し合います。入社3カ月の新卒社員は右も左もわからないものです。しかし、フレッシュで面白い意見やアイデアが多く出てくるのも事実。新卒社員が発案した意見をその場で採択し、全員で深堀を進め、翌年の事業計画に反映させることも枚挙にいとまがありません。この合宿を取り入れたことで、総合職全体の業界変革に対する思いが非常に強くなっています。


社員の多くはボールドの目指す先に共感し、「業界を変えて日本に貢献したい」「自分たちがチャンスを得て優秀なマネジメント層になりたい」という2つのモチベーションをもとに、働いているそうです。
自社の制度を、業界全体へ広げていく
当社ではエンジニアの内部研修制度を強みとしています。たとえば、シニアの雇用とエンジニアのケアを一挙両得にする『専任コーチ』制度。これは大手企業にてエンジニアの経験を重ね、役員や人事部長の経歴があるアクティブシニア層を再雇用し、当社エンジニアに対して1on1の面談を行なうものです。週に何度か来社していただき、エンジニアの目標設定やスキル向上のために必要なことをアドバイスしています。また、『感動大学』という、外部の講師を招いて開催する、仕事力の講座も制度として取り入れています。これは、総合職もエンジニアも参加可能で、技術力以外の人間力や仕事力を学ぶためのものです。ビジネススキルやロジカルシンキング、企画力など、エンジニアに不足しがちなプラスアルファのスキルを習得できます。
これらの制度を整えることで、とある新卒入社の文系社員がITパスポート試験、基本情報技術者試験を高得点で合格することができました。その後もお客様先で勤勉にキャッチアップを続け、入社一年で応用情報技術者試験の資格まで取得。彼女のその努力は高く評価され、翌年の新卒社員の育成を任せられるという大きな成長を見せています。
エンジニアが多い当社では、帰属意識を持たせる取り組みも行なっています。『BOLDay』という月に一度全社員が集まる帰社日や、その後に開催される『懇親会』などがあります。様々なプロジェクトで活躍する社員同士がコミュニケーションを取ることができる場で、横のつながりも増えているのです。また、部活動も活発で、現在では24種類の部があります。幅広い年代の社員がいる当社ですが、共通の趣味を持っている社員が集まることで絆が生まれ、社内で相談しやすくなったという声も増えています。
一方、社員数が増えるにつれて、社長と社員一人ひとりの会話の機会が減っていることも事実。そこで、毎月誕生月の社員を集めて『社長が社員を祝う会』を開催しています。毎回30名から40名の社員が参加し、各プロジェクト現場での出来事や会社の方向性について、社長と直接語り合うことを目的としています。


その他にも、ベテラン社員が後輩社員に技術を指導する『技術勉強会』も開催しています。資格取得や技術向上を目的としているこの勉強会は、今年は半期で12回ほど行なったそうです。
規模の拡大で、どの企業も羨む考え方を
当社では総合職に関しては新卒採用のみ行っています。そのため、常に幹部のポジションを目指して新卒同士で切磋琢磨している姿が見受けられます。総合職で求める人物像は、人柄がよく、謙虚で絶対に諦めない根性のある方です。選考のときには必ず「諦めなかったエピソード」を尋ねています。エピソードや実績がなかったとしても、そのことを謙虚に受け止めた上で、今後どうしていきたいかをロジカルに話すことができれば良いと考えています。一方、エンジニア職に求めているのは、人柄と勤勉さ。お客様先で一日中業務を行なった後でも、苦手とする分野の講座を二時間受けてスキルアップしたい、という意欲の高い方とご一緒したいと思います。
育成や制度を充実させることで、少しずつ、エンジニアが定年まで働ける職場に近づいています。今後も、制度そのものの質やクオリティを向上させ、より人間力の高いエンジニアを創出していきたいと考えています。そのためには、会社規模の拡大が必要不可欠です。この拡大は、利益だけを求めているわけではありません。大手の一角としての地位を確立することにより、他のIT企業が真似したくなるような会社を目指しているのです。当社の良い部分はそのまま磨いていき、課題を一つひとつ改善しながら最速で成長し続ける――。そして、当社が大企業になっても画期的な雇用制度を生み出し続け、全員が定年制度で働ける未来をつくって参ります。


IT業界の雇用問題の解決を最前線に取り組む株式会社ボールドでは、64歳のエンジニアも活躍しているようです。全員定年制度を目指すための教育制度が功を奏しています。