介護にイノベーションを起こし、最高のホスピタリティを提供する
株式会社クラーチ代表取締役 鮫島 智啓
業界の活性化に必要なのは、社員のコミュニケ―ション
当社は有料老人ホームを10カ所で運営しています。従来の介護施設には、「本当は自宅で過ごしたい」、「自由やプライバシーがなく、自分らしい生活ができないのではないか」というネガティブなイメージが多く、私たちはこれを解消していく必要があります。高齢者の方が年齢を重ねるたびに、今後の人生がわくわくするような期待へとつながる価値を提供し続ける――。福祉の観点に留まらず、介護事業の新しい仕組みをつくり、人生をより豊かに過ごしたい高齢者を顧客とする究極のサービス業として、様々なイノベーションを起こしていきたいと考えています。
そこで社員に最初に求めているものは“チームワーク”です。社員同士のコミュニケーションがしっかりと取れているホームが提供するサービスであれば、ご入居者も安心し活き活きと過ごせること間違いありません。そのチームワークを高めるために、当社ではさまざまなコミュニケーション活性化の仕組みを用意しています。例えば、福利厚生としての社員間交流会補助金制度である『3-3-3』と『居酒屋会議』もその一つです。『3-3-3』は3つの部署から3人以上集まった際に、交流費として3000円支給するという制度で、新卒社員研修やプロジェクトの集まりで多く利用されています。『居酒屋会議』はマネージャー職が企画をして、ホーム内の社員同士で居酒屋等に行く際に利用されているもので、いずれも職場を離れたコミュニケーション機会として社員から大変好評です。
さらに、今年度から『とれじゃーなる』という社内報を毎月発行しています。これはコミュニケーションを円滑にし、ホスピタリティ力を高めることを目的とし、各ホームでの魅力的な取り組みや、感動を与えるようなエピソードを記事にして共有するものです。例えば、先日はホームで開催された『ながしそうめん企画』について掲載されました。ご入居者が楽しめるように社員が試行錯誤を繰り返した結果、竹の角度を調整しちょうどよいスピードで流れるよう工夫することができた、という内容です。ご入居者のことを第一に考えた社員の思いを共有し、全社でモチベーションを高めています。これらの仕組みを導入したことで、ホーム内外問わず思わぬところで、これらの記事を話題に新たなコネクションが生まれるようになりました。


その他にも、チャットを利用した社内コミュニケーションや各種クラブ活動も活発、ホームの中だけに留まらず、各ホームの横のつながりを深めるような環境を用意しているそうです。
顧客満足度を高める、クラーチ独自の社員教育
介護サービスは、どんなに建物や環境が魅力的でも、サービスの質が良くないとご入居者の満足度は向上しません。そのため、専門性のあるスキルに加えて、ホスピタリティマインドの高い社員を一人でも多く育成することが必要不可欠です。そこで、当社は自主性を重んじた社員教育にも力を入れています。2015年より取り入れた『KURACI-Learning』は、年間50本の研修動画を配信する仕組みで、撮影から講師にいたる全てを当社の社員が担当しています。各ホームの運営はシフト制のため、全員が一斉に研修を受けることは簡単ではありません。そこで、自らの受講が可能な時間に学ぶことができるよう、動画という仕組みの導入に至りました。その中には月に一度、私自身も『社長メッセージ』として動画を配信しています。この動画により、当社で起こっている出来事などを共有し、社内の情報共有をスムーズに行なうことができるようになりました。ホームを訪問すると社員から「今月も見ましたよ」と声をかけてもらえることも増え、社員との交流も深めることができています。
また、資格取得支援のサポートも行なっております。「こういうことをしたらご入居者の満足度向上に繋がるのではないか」という社員のアイデアを、資格を通して実現できるように取り入れました。そのため、介護福祉士やケアマネジャーの資格以外でも仕事で活かせそうな資格は積極的に支援をしています。以前、とある社員から高齢者向けのヨガの資格を取得したいという希望が挙がり、それに対して受講費を補助いたしました。その社員は見事に資格を取得し、ホーム内のレクリエーションの一環として自らが講師となってシニアヨガ教室を開催しています。このように自主性を重んじる仕組みが社員のモチベーションを向上させ、顧客満足度を高めることにつながっているのではないかと感じます。


『社長メッセージ』の動画では、会社全体として新たに取り組む施策など、今後のビジョンにまつわるものが多いそう。事前に制度導入の経緯をお伝えすることで、社員の理解もより深くなるようです。
自分の強みや特性を活かせる環境。全てはご入居者の幸せのために
当社では高次のサービスクオリティにおいては『マニュアル化しない』ことを大切にしています。当社の850名のご入居者に、人生の最後までわくわくした時間を過ごしていただくために、社員にはサービスをより良くするために何ができるのかを、「考えて実行する」力が求められます。とかく人間は、無意識でいると指示を待つだけの受け身になり、楽な道を選択してしまいがちです。それを改善するために、当社では新卒社員の研修の一環として、「課題解決」についての研修を取り入れています。クラーチ流の課題解決の型を持つことで、自ら考えて実行する力を鍛えられるようなサポートをしています。
イノベーションを起こし、究極のサービス業を目指している当社では、自分の個性や強みを活かし、現場で発揮できる方と共に働きたいと思います。お一人おひとりのご入居者の希望を叶えるには、様々な力やアイデアを持った社員の力が必要です。たとえば、幼少期から書道を続けている社員がいます。彼女は自ら書道のレクリエーションを開催し、ご入居者を楽しませることに成功しました。そして自分の所属するホームだけでなく他のホームも巻き込み、ご入居者の作品を披露する機会を用意するなど楽しくやりがいにつながる演出しています。このように当社では特技を活かし、自らの提案で仕組みづくりができる環境があります。
当社の仕事は、自分のサービスがご入居者の表情や声に直接反映されるため、目に見える形でやりがいを実感できる仕事です。5年、10年、15年とご入居者と寄り添い、その方の人生を豊かにしていく――。これを面白いと感じ、仕事を楽しめるような人と、当社を一緒に盛り上げていければと思います。


従来の介護業界にはなかった新しい考えをカタチにしているクラーチ。「自身の成長が、ご入居者の幸せにもつながる」と鮫島社長は話します。