業界内では革新的な制度で、社員の成長をうながしていく
東京電工株式会社代表取締役 山本 浩司
「成長を実感できる制度」を確立
当社では自分のキャリアプランを明確にするためにも、入社時の段階から具体的に意識づけを行っています。これは言葉で示すだけではありません。図表などで示して、「将来、何を目指したいのか」を具体的に提示していくのです。2016年からこの制度を施行し、試行錯誤しながら社員教育に取り組んでおります。
経験値や個々のスキルの熟練度によって評価は大きく変わりますが、「入社〇年後までにここを目指す」と目標を定めておくことは大切です。なぜなら、そこに到達するためにどうやってスキルを高めていけばいいのかを自主的に考え、意欲的に仕事に取り組めるようになるからです。
これからお話しするものはあくまでも一例ですが、新入社員として入社した後は、「第二種電気工事士」の資格を取得します。資格取得後は現場での経験を積み、施工管理技士を目指すのであれば、「第二級電気工事施工管理技士」の資格を取得し、スキルを磨いていただきます。そして5年以上の実務経験を経て「第一級電気工事施工管理技士」に合格し経験を重ねた際には、卓越したスキルを持っている施工管理技士へと、さらに評価が高くなるのです。また、電気工事士を目指される方も施工管理技士同様、まずは「第二種電気工事士」の資格を取得し、必要となる資格の取得と実務経験を重ね、卓越したスキルを持っているポジションを目指します。
このように、本人の希望や成長に沿った具体的な未来図を描いてあげることによって、一人ひとりの社員が何を、どの程度の期間で目指していけばいいのかがより具体的になります。そのうえで、「人をまとめていける能力が備わっているのか」「人がついていきたいと思える人材であるか」という人間性の部分も重要視しています。どんなに資格を多く取得していても、この部分が欠けているようでは、よい仕事ができるようにはなりません。
目標を定めて邁進していくなかで、高い人間性を身につけていく。そうして成長していった人材は、会社に必要不可欠な戦力となって貢献していくものであると考えています。


以前までは、社員にとって『昇進』は時間がかかるものと思われがちでしたが、キャリアビジョンを明確にしたことで手の届く目標になりました。
「部下に本音を話させる環境」を自らつくる
私が若い社員に対して心掛けているのは、「定期的にコミュニケーションをとること」です。現場に出ていると、毎日顔を合わせて話をすることは不可能ですから、定期的に時間を設けては、彼らから近況を聞くようにしています。
「今の現場は楽しく仕事ができているのか?」
「何か問題点があったら、遠慮なく話してほしい」
そう言うと、みんな「実は……」と本音で話をしてくれることが多いです。
そこで出た問題点は、「ただ聞いただけ」で終わらせません。問題点があったらどう改善していくべきか、直属の上司も交えてミーティングを開きます。そこで意見交換をして問題点を解決していくということは、往々にしてあるのです。昨今話題になっている「働き方改革」は、社員の労働時間や残業手当などが多く取り沙汰されていますが、私は「社員が納得して働ける環境を作ってあげる」ことにも重きを置いています。
私たちが働いている建設現場では、昔から「3K」と呼ばれてきました。弊社の仕事は肉体労働ではなく、電気系統の施工が主な仕事なので、言われているほどのきつさはありません。ただし、多くの人が現場での仕事に従事している分、人間関係の部分で悩んでしまうことはあります。
建設現場は、関連会社を含め、多くの人たちが携わっています。現場を統括する管理者もいれば、作業に従事する職人さんもいます。そこに電気工事なども加わるので、たくさんの意見が飛び交っては、話し合いがまとまらないことも多々あるのです。若くて経験の浅い社員は、自分がどうしていいのかわからず、判断に迷ってしまうこともあります。こんな場合には、会社として、トップの私や上司が適切な判断をして、解決策を講じるのは当然のことです。1人1人の社員に「この会社に来てよかった」と思ってもらうためにも、現場の状況を常に把握すること、当たり前のことを当たり前にやることが、トップである私の務めであると考えているのです。


社員たちとプライベートでサッカーを行うことも多い山本社長。飲み会で気楽に話す時間も設けています。
「これだけの仕事」をした部下を適正に評価したい
今の時代、「労働に見合わない対価」を得ようと主張している人が多いように感じます。
「ボーナスを上げてほしい」
「就労時間は短くして、休みをたくさんほしい」
たしかに誰もが考える理想かもしれません。けれども、肝心の仕事の成果が残せないようでは、残念ながらこうした主張は聞き入れることができないのです。
たしかに社員ががんばって働いてくれたことで得た利益は、社員に還元すべきだと考えています。そのためには「一定の期間内、あるいは限られた時間のなかでどれだけの仕事をして、成果を残してきたのか」を示してもらわなければ、「正当な評価」を下すことはできないのです。
私は若い人たちが仕事に前向きにチャレンジして、結果として失敗してしまったとしても、決して叱ることはありません。「次はこうしてみたらどうかな?」とアドバイスをしてあげるようにしています。試行錯誤を繰り返しながら挑戦し続けることは、どんな仕事においても大切なスピリッツだと考えているからです。
「私はこの1年間、これだけの仕事をしてきました。それによって結果も出し、会社にも貢献しているはずですから、評価していただけないでしょうか?」
このような提案を持ちかけられたら、私はそのがんばりに対して正当に評価をしてあげています。「私はこうしていきたい」と、主体性を持って仕事に取り組むことで、1つの仕事を極めていく。人が仕事を通じて成長していくうえで欠かせないプロセスです。
目標を設定してゼロから育てていくことは、とても労力を必要とされることです。けれども、私は若い社員1人1人と真摯に向き合い、
「10年、20年先、会社に欠かすことにできないリーダー的立場の人材」
を、次世代に向けて輩出していきたいと考えています。


面接では毎回「将来、社長になりたいか」と聞いている山本社長。会社を引っ張っていく主体性を持てる方と働きたいと希望に胸を膨らませていました。