「あえて施設を増やさないこと」で一人ひとりを評価する
株式会社グランピア施設長 月形 明稔
職員一人ひとりの働きや成長を見ていきたい
当社が運営している施設は介護付有料老人ホーム「リンデンバウム日明」のみです。福祉業界では複数の施設を運営している企業が多いですが、当社の場合はあえてリンデンバウム日明だけに集中して運営を続けています。
私はもともと複数の飲食店を経営していたのですが、店舗が増えていくにつれてスタッフとのコミュニケーションが希薄になってしまうこともしばしば。店長クラスとは定期的な会議で顔を合わせていましたが、アルバイトスタッフは顔と名前が一致しないこともありました。
私は職員一人ひとりの働きや成長を自分の目で見ていくことを重視しています。あえて施設を増やさないことで職員の技術レベルの向上やそれぞれに適した評価をしていきたいと考えています。一施設を運営していくことには、職員のキャリアアップが頭打ちになってしまうという課題もあります。そうならないために当社では百項目以上から成る評価基準を設け、一人ひとりに適した評価ができる仕組みづくりを行なっています。
職員のキャリアアップは必ずしも役職名だけに依存するものではありません。その人の器や能力によって評価するものであり、きちんとキャリアアップの基準を設ければ無理に施設を増やさなくても、活躍の場を提供できると考えています。


「やさしく ゆったり よりそって」の理念の下、人員配置もゆったりした配置を心がけており、職員にとっても非常に働きやすい環境となっている。
若い人たちの力やアイディアを現場で生かしたい
福祉業界では年々職員の高齢化が進んでいます。日本全体を見ても少子化の一途を辿っており、福祉系の専門学校や大学が次々と倒産している状況です。これからの時代は若い世代の方々ものびのびと活躍できる環境をつくっていかなければなりません。当施設でもそういうメッセージを発信したいとは思っていますが、なかなか若い世代に伝わらないのが悩ましいところです。
職員の高齢化が進む福祉業界では、型にはまったやり方や固定概念が根強く残ってしまっている部分があります。業界経験が長くなればなるほど考え方が固くなってしまいがちですが、そこに若い人の新しいアイディアや意見が入れば大きく変わると思うのです。
介護の現場では常に問題解決能力が求められます。いかに目の前の問題や課題を早く解決できるかが仕事のため、柔軟な考え方や対応力が必要になります。若い人たちは経験こそ浅いですが、仕事に対する情熱やロジカルに考える思考力という強い武器を持っています。
私は入居者様の命に関わるような重大な問題ではない限り、なるべく若い人たちの柔軟なアイディアや情熱的な意見を尊重していきたいと考えています。


「今後は、この仕事に志を持ってくれる方と一緒に働きたい」と月形施設長は微笑んだ。職員からも親しまれている素敵な人柄が見て取れる。
入居者様一人ひとりに適した生活をサポートしていきたい
私は以前、ホテルや飲食店で働いていました。サービス業が長かったものですから、お客様に対する言葉遣いや立ち振る舞いはすべて完璧にこなさなければいけないと思っていました。それ故にリンデンバウム日明を立ち上げた当初は質の高いホスピタリティを求めるあまり、入居者様の要望や希望を掴みきれていないことがありました。
もともと料理人だったこともあり、入居者様には美味しい料理を召し上がって欲しいという強い想いを持っていました。ホテルの料理長にお越しいただき、毎日贅沢なご馳走を出していたのです。最初は入居者様からも満足していただけていましたが、数ヶ月、半年も経つと素朴な家庭料理が恋しくなってしまうのです。私はそのとき、今まで求めていたホスピタリティは、入居者様のためでなく、自分の理想だったことに気づかされました。
他にも入居者様に失礼がないよう言葉遣いにも細心の注意を払っていました。日本語には敬語や謙譲語などさまざまな種類がありますが、それを完璧に使いこなすことが理想だと考えていたのです。そのため、職員のフランクな言葉遣いが気になってしまうこともありました。しかし、フランクな言葉遣いでも入居者様が喜んでくれていたのです。
このようなあたたかい心のこもった言葉を愛語といいます。そのときも職員の接し方を見て愛語の大切さや必要性に気づくことができました。
まだまだ試行錯誤をしている段階ですが、時代の流れやニーズに適したサービスを提供できるように柔軟な考えを持って入居者様一人ひとりに適した生活をサポートしていきたいです。


株式会社グランピアでは、子育て支援のように、女性にとって魅力的な制度も今後取り入れていく予定だ。