技術よりも人間力 成長を最大限に後押しする育成法
サイド・ビィ株式会社代表取締役 犬塚 俊裕
礼儀やマナーはプロ直伝 2泊3日の合宿で人間力アップ
2003年の設立以来、一貫して注力しているのが社員の人間力の育成です。当社の事業上、社員たちはお客様の企業に常駐し、協力会社の方々と一丸となってプロジェクトを進めていきます。そこで日常的に必要となるのが、礼儀作法や社会人マナー、コミュニケーション力といった人間力です。
そこで当社では、新卒社員を対象に、実戦的かつユニークな研修を行っています。たとえば、リゾート地のホテルを利用して行う2泊3日の合宿では、“サービスのプロ”であるホテルマンから接遇やマナーを直接教えてもらいます。この合宿ではその他にも人見知りを解消できる課題を課したり、仲間同士の信頼関係を育む時間を設けたりなど、企画が盛りだくさん。合宿期間中は外部との連絡を原則禁止にしており、徹底的に自分自身を見つめてもらうことも人間力の向上につながっています。
私は社業のかたわら、少年サッカーチームの代表を務めていますが、年を追うごとに先輩・後輩の上下関係の希薄化に懸念を抱くようになりました。高校年代でも1年生と3年生の間に上下関係がほとんどなく、“仲良しクラブ”になってしまっているケースが少なくありません。一見すると、先輩・後輩の間に壁がなく、タメぐちで話せる環境は居心地の良さそうな場所に映るかもしれませんが、それでは社会で通用しません。
社会人には先輩への適切な接し方や社外の方に対するマナーが求められます。それができるかできないかで、その社員を取り巻く環境は大きく変わります。常識やマナーをわきまえていれば周囲の方々の協力が得られるでしょうし、いろいろなスキルやノウハウを教えてもらえるでしょう。しかし、人間性に乏しい人は周囲とコミュニケーションが取れず、協力を得られなくなります。礼儀やマナーはそれほど重要なものなのです。だからこそ、社員たちの人間力を育みたいのです。


人材育成の一環としてブラザーシスター制度を取り入れているサイド・ビィ株式会社。犬塚社長は「社会では、先輩と後輩の関係性がとても大切。技術だけでなく、人間性も養ってほしい」と社員の成長を期待します。
社員のひと声がカタチに 自主性を育むプロジェクト活動
“会社をよくしようプロジェクト”としてスタートした「プロジェクト活動」も人間性を育てるための取り組みです。当社にはお遊び的なものからコアなものまで複数のプロジェクトがあり、社員たちは興味のあるプロジェクトに自主的に参加しています。
社員たちは“新しい技術に触りたい”という意識を持ってプロジェクトに臨みます。その想いに応えるために、会社側としても最新の機器や設備を導入するなど全面的にバックアップ。プロジェクトの成果を発表する機会も頻繁に設けており、ボトムアップの提案を収集できるようにしました。
その結果、社員の自主性が高まり、あるプロジェクトチームによってISO27001(ISMS認証 ※情報セキュリティマネジメントシステムの国際標準)を取得。また、会社行事プロジェクトでは、社員旅行や新人歓迎会を盛り上げるためにアイデアを出し合っています。このようなプロジェクト活動を通じて人間性を育てることも当社の特色です。
■仕事で行き詰った時に…。福利厚生を充実させる理由
私が福利厚生の充実に注力している理由は、社員にリフレッシュする時間をつくってほしいからです。当社の福利厚生制度には、会員制リゾートホテルや保養施設を利用できるものや、費用を全額会社が負担するクラブ活動など、仕事を忘れて羽を伸ばせるものが多くあります。
これは私がサラリーマン時代、行き詰まった時はあえて仕事から距離を置き、思い切って休んだことで流れが好転したことがあったからです。壁にぶつかったり、仕事で行き詰まった時こそリフレッシュする。それが長く働くための秘訣だと思います。当社で働く社員も仕事で行き詰まったら福利厚生制度を利用して、羽根を伸ばしてリフレッシュしてほしいです。


「会社員時代は仕事で行き詰まり、会社とは逆方向へ行く電車に乗ったこともありました」と笑う犬塚社長。そのような経験が福利厚生を充実させるきっかけになったそうです。
人間力の育成は永遠のテーマ 教育体制のさらなる強化へ
「働き方改革」は今や企業から切っても切り離せないテーマになりました。当社もご多分に漏れず、労働環境の改善など「働き方改革」の推進に努めております。
特に残業時間にはかなり注視しており、月40時間を超えて残業する場合、必ず申請が必要になる制度を設けました。また、休日出勤した場合、振替休日を必ず取るような働きかけも行っています。有給休暇の取得も推奨しており、夏期は強制的に5日間取得してもらっています。
しかし、残業時間の削減や休日数の増加を実現しても業務量が減るわけではないので、これまでよりも短い時間で同じ業務量をこなせるように、生産性を高めることが求められます。
そこで当社では社内業務のシステム化を進めています。すでにグループウェアやチャットシステム、ワークフローは導入済みで、給与明細や源泉徴収票などはペーパーレス化しました。今後はテレビ会議の導入を検討しており、自宅にいながら会議に参加できるシステムを2019年中に取り入れるつもりです。
そして、生産性の向上を図る際にも人間性の育成は欠かせません。仕事の段取りや優先順位の決め方、仕事への考え方やアプローチ方法などは、まだまだ教育体制を強化したいと感じています。「営業の在り方はこれ」「技術者ならこう考えて当たり前」と業種ごとに分けるのではなく、どんな環境でもオールラウンドに活躍できる人材を育成したいです。それが最も効果的な人間力の育成方法だと思います。


サイド・ビィの社名の由来はレコードのB面。「A面のような華やかさはないが、味があって欠かせないもの。そのような会社であり続けたい」と犬塚社長は青写真を描きます。