「一番日報」制度で社員の満足度とモチベーションを向上
株式会社CBホールディングス代表取締役社長 鈴木 尚之
ビジネスマンの心に響いた日報を毎日表彰
当社では毎日、営業職のすべての社員が全社向けに日報を発信します。日報に書く内容は、単なる1日の業務内容ではなく、お客様との会話で生まれた気づきや失敗から得た学びなどです。
そして、すべての日報の中から最も秀逸だったものを「一番日報」として毎日選出。当初は私の独断で選んでいましたが、現在は日替わりで選定者を決め、その選定者の心に最も刺さった日報を「一番日報」にしています。選定者はベテラン管理職の日もあれば新卒社員の日もあるため、選定者へのメッセージ要素を含んだ内容を書く強者もなかにはいます。
日報を全社で共有し始めたのは、私が代表に就任した2015年頃。きっかけは、営業で売上が上げられなくてもムダではないことを、社員に知ってもらうためです。
営業職は仕事柄、売上を上げられない日があると“今日1日、何をしていたんだろう…”と頭を抱えてしまいがちです。しかし、お客様と接する中で必ず、何かしらのヒントを得ています。少なくとも会社にとってプラスとなる資産を築いているわけです。その築いた資産を還元すれば、会社に貢献したことになります。
また、一番日報として認められれば、たとえその日が売上ゼロだったとしても“今日、頑張ったんだな!”と前向きになれるはずです。つまり一番日報は、社員たちの満足度やモチベーションを高めることができる制度なのです。


「一番日報は拠点対抗のポイント制。毎月、最もポイントの高かった拠点に福利厚生費を支給しています」と話す鈴木社長。社員たちはその福利厚生費により社内親睦を深めているそうです。
一番日報で社内共有が活性化 離職率低下の恩恵も
一番日報は、社内共有の活性化という恩恵ももたらしました。当社は、北は札幌から南は福岡まで全国10拠点に展開しています。以前は、札幌支社と福岡支社の支社長クラスがお互いに情報交換することはあっても、役職を持たない社員が他の支社の社員と情報をやり取りすることは困難でした。それ以前に、他の支社の社員がその日に何をしたかなんて、興味はほとんど湧かないはずです。
ところが、一番日報には成長につながるヒントがたくさん詰まっています。私の記憶として最も鮮烈に残っている日報は"仕事のできる社員の失敗談"なのですが、そこはビジネスマンの胸に響く内容で満ちていました。その他の日報にも良いネタが満載なので、自然と他の支社の社員が書いた一番日報に注目が集まるようになります。その結果、支社の垣根を越えたインフォーマルなつながりが生まれたのです。これこそ、一番日報を導入した最大の成果かもしれません。
また、新卒社員にとっても効果的なツールになっています。入社後3ヵ月間の本社研修が終わり勤務地が全国各地にバラバラになった後でも、同期の頑張る様子が日報によって把握できるからです。それによって「みんな頑張っているから、もっと頑張ろう」「悩んでいそうだから、ちょっと連絡を取ってみよう」という意識が芽生え、一人で悩みを抱えずに済む状況が生まれます。
仲間がいる、誰かが見ていてくれている――そのような気持ちが、長く働いてもらうために大切なことだと思いますし、実際に一番日報の導入後は離職率が確実に低下しています。


「失敗談の他にも、成績が芳しくない社員の頑張った行動も一番日報に選ばれるケースが多い」と鈴木社長。社員の方々にとって“見てくれている”ことが実感でき、モチベーション向上につながっているそうです。
課題は研修制度の体系化 まずは必要なスキルの棚卸から着手
私たちが今、喫緊の課題に挙げているのが研修制度の整備です。業界の変化に合わせて会社自身も変化を重ねていく中で、そのスピード感にあった研修制度が現状では整備仕切れていません。新卒社員が入社数年でマネージャーに就くためにはどのような研究カリキュラムを組むべきか、短期的かつ長期的なプログラムに則った研修制度を構築していく必要があります。
そこで着手している具体策のひとつが、マネージャーに必要な知識・スキルの定義づけです。これまでの当社は、"営業成績が良い=マネージャーにふさわしい"という営業会社にありがちな定義を設けていました。しかし、マネージャーという役職は、営業成績が良ければ務まるほど簡単なものではありません。
もちろん、営業として成果を上げることは大前提です。その上で、まずは必要な能力を定義づけ、その能力を養うための研修制度を整えていくことが必要だと感じています。
■今後生き残っていくための「働き方改革」
世の中では近年、「働き方改革」が叫ばれています。私も「働き方改革」には賛成で、残業なんかする必要ありませんし、時間的なワークライフバランスは積極的に取ってほしいです。ただその一方で、若い皆さんにはもっと思い切って仕事をしてほしいと思います。それは長時間働くというわけではなく、決められた時間内で頭をフル回転させる働き方です。
今後はAIの導入が進み、単純作業しかできない人間は淘汰されてしまう時代に突入するでしょう。若い皆さんの中には、そのことに不安を抱いている方や、イメージがつかない方もいるかもしれません。私の考える「働き方改革」は、まずはそのことに危機感を抱き、感じてもらい、その上で、その危機を打破するためには、どのような生き方、考え方が必要なのかを考える環境を提供し、1つの解決策を提示し続けることです。


顧客の経営支援にも事業の幅を広げる株式会社CBホールディングス。「単純な仕事ではありません。頭をフル回転させて働きたいという方はぜひ!」という鈴木社長の力強いひと言が印象的でした。