「読書手当」「文化芸術鑑賞制度」で育む社員のチカラ
株式会社フェローズ代表取締役社長 野儀 健太郎
社員の知見を広めるため、さまざまな取り組みを推進
当社の社員は毎月1冊、必ず本を読まなければなりません。1人2000円まで会社の補助を使用できる「読書手当」を利用して、毎月本を購入することをマストとしています。読む本の種類にも指定があり、当社ではクリエイターの皆様を相手に仕事をするため、入社3年目まではウェブデザインやコーディングなどクリエイティブ関連の書籍を読んでいただきます。
そして3年目以降は、後輩指導にあたる機会が増えることも視野に入れ、マネジメントに役立つようなビジネス書が加わり、偶数月にはクリエイティブ系の専門図書、奇数月にはビジネス書と毎月1冊ずつ交互に本を読むことになります。さらに、本を読んだ後は「専門性向上レポート」として提出することになっています。
そうして社員が読んだ本や書いたレポートは社内の本棚に蓄積されていきます。「読書手当」の導入から3年が経ち、今では壁一面の本棚の大部分を埋めるまでになりました。これは誰もが手に取って見られますし、書籍は貸し出しも可能。そのため、来社されたクリエイターさんや社員間で知識の共有を行うことができます。
もうひとつ、特徴的な制度として「文化芸術鑑賞制度」を設けています。これは、会社が最大4000円の費用を負担し、月に1度映画や美術館、落語、歌舞伎などを鑑賞できる制度です。基本的には土日に行っていただくことになりますが、4カ月に1回は半休や早退を使用しての鑑賞も可能です。また社員同士でなく友人と一緒に行く場合でもこの制度を利用することができるのは、画期的な制度と言えるのではないでしょうか。


3年前から導入された読書手当。1ヵ月ごとに提出する「専門性向上レポート」は丁寧にファイリングされ、良質な知識として社内で共有されています。
社員満足の向上に社員の成長は必要不可欠
これらの制度は、設立当初からあったわけではありません。これまで会社の成長とともに社員も成長してきましたが、その過程で会社として社員個人がもっと成長できる機会を与えなければならないと感じたのが制度導入の大きな要因でした。
社員の自己成長が生み出すもの――それは、社員満足度です。
働くうえで重視するものは人それぞれで、なかには給料をもらうことが一番大切だという方もいるでしょう。ですが、私は一番大切なのは、社員が今の仕事で自分の成長を感じられるか。そして、自分が人に貢献できていると感じられるかどうかだと思っています。社員自身がこれらを実感できていればやりがいを得られるはずですし、積極的に仕事に打ち込めるに違いありません。
そうして成長を遂げた社員は、クリエイターと企業の間に立った時に、知識不足を露呈することもありません。「こんなことも知らないのか」といったクレームを受けることもなくなるでしょう。当社の事業内容を鑑みてもクリエイティブな領域について勉強することはとても大切なことなのです。
また、読書手当や文化芸術鑑賞制度は専門知識を習得するだけでなく、“自分は相手に対して何ができるか”といった対人関係に関する考え方にも大きな影響を与えます。そのため、社員の意識に良い変化が起きていると日々感じています。


株式会社フェローズでは日報を重視しており、社員は自らの気付きや想いを日報にしたためています。その際、読書で得た知識を業務に生かしたシーンについて書く社員も多いそうで、読書手当の効果がきちんと表れていることがうかがえます。
先輩後輩で行く食事には、1人につき1000円を支給
おかげさまで当社は2018年で16年目を迎えました。設立当初わずか5名だった社員数も、現在は100名に到達。社員数が増えたことで、新たに問題として浮上したのが社員の関係性の希薄化です。そのため、今後は社員同士の交流の活性化が課題であると考えています。
現在、この課題解決の糸口として様々な取り組みを行っており、そのひとつが「BS(ブラザー・シスター)見守り制度」です。これは先輩と後輩の結びつきを強くすることを目的として導入した制度で、先輩が後輩を食事に連れて行く際、一人につき1000円を夜食代としてお出しするというものです。この制度には回数制限がないので、もし毎日食事に行くのであれば、毎日お金を支給します。
そしてこれは先輩後輩間にのみ適用されるものとなっています。というのも、もしこれが同期同士の食事であれば、その気安さからついつい仕事に対するネガティブな思いを話してしまいがちです。しかし、先輩と後輩であれば、先輩は先輩として仕事について話そうとするでしょうし、後輩は後輩としてアドバイスをもらおうとするでしょう。そうして一緒に行った食事の場では、仕事について熱く語り合うことはもちろん、先輩から後輩に、「最近仕事で困っていることはない?」などと声をかけ、後輩のケアをすることもできます。
他にも、エンゲージメントを高めるため、社内部活制度も設けています。毎年1回、公式戦に出場することが条件で、現在はフットサル部やテニス部、ロードバイク部などが活動中。もちろん、活動の際に必要なコート代などは会社負担です。
そして、社内に設けているセミナールームも社員同士の交流の場となっています。この部屋は、セミナー以外の用途でも使用されており、月2回の定例会議後に、お寿司やピザなどのケータリングを頼み、みんなで食事をしながら大盛り上がり。その際は全国10ヵ所の支社もテレビで繋ぐので、全社でコミュニケーションを深めています。このような施策が今後の社員交流に良い影響を与えてくれると嬉しいですね。


「当社は働き方改革の一環として、生産性低下を招かずに時短勤務ができる取り組みにも着手しています」とおっしゃる野儀社長。働きやすさ向上の面でもさまざまな取り組みを行っています。