ランチタイムは社員の夢や希望を知る“絶好の機会”
株式会社ウイングプラス代表取締役 赤羽 俊春
会社の利益は二の次 社員が思い描くキャリアの支援が最優先
社員と一緒に過ごすランチタイムは、社員の本音を聞く絶好の機会です。当社はSES(システムエンジニアリングサービス)事業が中心で大半の社員はクライアント企業に常駐しているため、頻繁に顔を合わせることができません。そこで、私や役員が社員の勤務先まで足を運び、ランチをしながらコミュニケーションを図る機会を設けています。
その際に話す内容は、職場環境に対する要望や現状の不満、さらにプライベートの悩みなど様々。そのなかで中心になる話題が、どのようなスキルを習得したいか、どんな案件に携わりたいのか、将来的にどのような人材になっていきたいか、などの社員の思い描くキャリアビジョンについてです。
具体例をひとつ挙げると、以前、PHP(プログラミング言語の一種)を学びたいと打ち明けてくれた社員がいました。本人の希望を最優先にすることが当社の大きな特色なので、その社員も例に漏れず、希望の沿った案件を積極的に紹介しました。その結果、一生懸命頑張ってくれたこともあり、「PHPなら何でも聞いて!」と胸を張れるほどのスキルを習得。勉強会で若手社員に教えるまでになりました。
ところが、PHP一本では将来性に不安を感じていたその社員は、Java(プログラミング言語の一種)も学びたいと熱望。一般的にJava未経験者を案件に回すと、クライアントから得られる報酬額が下がり会社の利益が減ってしまうため躊躇してしまいがちですが、その社員の将来性を考えれば、PHPとJavaの両方をできたほうが間違いなくプラスです。どちらの選択肢を取るかは、考える余地もありません。
社員一人ひとりが思い描くキャリアビジョンを実現する方法を一緒になって探していく――それが、社員たちの働きやすさにつながっていくと思います。


柔和な表情と穏やかな口調が印象的な赤羽社長でしたが、「やりたくない仕事をやっていても、生きがいにも成長にもつながらない。社員の成長を支えていきたい」と熱弁を振るうシーンも。
“仲間の存在”の大きさを知った過去の出来事
私が大手企業に勤めていた頃、“仲間の存在”によって救われた出来事がありました。その当時、私はプロジェクトの責任者として、世の中に誕生していない革新的なコンピューターの開発を指揮していました。そのコンピューターは米国の一流IT企業も認めるほどの技術レベルを誇り、完成し次第、その企業への導入が内定済みでした。
ところが、そのコンピューターは設計理論上、実現不可能であることが判明したのです。それが分かった時は震えが止らず、クビ宣告を受けることも覚悟したほどでした。
そんな時、「違う設計で動くコンピューターをつくりましょう」と言ってくれたのがプロジェクトチームの仲間たちでした。そして、実際に同じ機能を有したコンピューターを完成させてしまいました。私はチームの仲間の支えのおかげで、そのプロジェクトを完遂できたのです。同じ目標を共有し、技術者が一丸となって人が幸せになれるものを世の中に生み出す。まさに、仲間の絆のなせる業でした。
そのような経緯もあり、当社も仲間同士の絆が強い会社にしたいと思っています。食事会や懇親会、勉強会を頻繁に行っているのは社員間のコミュニケーションを活性化するためです。
私は会社を経営するうえで、“人を大切に育てたい”という想いを常に抱いています。その中でも特に、仲間との絆やコミュニケーションの大切さを教えたいですね。SES事業は社員それぞれの勤務地がバラバラのため、お互いの絆を深めることは簡単ではありません。それでも、おかげさまで各イベントの参加率は高く、みんな楽しんでくれています。今後も社員同士がコミュニケーションを図る機会を設け、仲間の絆を深めていきたいです。


「小さい会社ですし、仲間意識を大切にする文化が合っていると思う」と笑顔で話す赤羽社長。会社の都合で社員を“使う”のは言語道断のようです。
若手が飛躍的に成長できる場を! 赤羽社長が抱える大きな宿題
今はSES事業が100%を占めていますが、当社はもともと請負事業も積極的に行っており、売上全体の2割を請負事業が占めていた時期もありました。今後の課題は、この請負事業の再開です。
請負事業は赤字になるリスクがとても高く、利益にならないケースも少なくありません。しかしお金には換えられないメリットが限りなく多くあります。その最たるものが、新卒や若手社員の育成です。
請負事業はすべての工程を社内で一括制作できるため、客先常駐型のSESではなかなか経験できないような業務に携わることができます。若手社員にとって、学びの場は欠かせません。請負事業の復活が叶えば、若手社員が飛躍的に成長できる最高の学びの場になるはずです。
また、ベテラン社員の技術やノウハウを若手社員に継承する絶好の機会になることも、請負事業の大きな魅力です。当社には40歳以上の技術者も多く、60歳を超える社員もいます。請負事業では、そのような経験豊富な有識者がリーダーとなって開発を推進していくことになります。そんな姿を間近で見ることができ、さらに様々なシーンで指導を受けられる環境は若手社員の成長に大きく寄与するはずです。
請負への再チャレンジ――。それが、私が今抱えている大きな宿題だと感じています。


「事務所の狭さ」も課題に挙げる赤羽社長。請負事業再開の目安にしている“社員数50人への増員”を前に、事務所移転も視野に入れているようです。