社員を縛る“邪魔”は徹底排除 信頼で結ばれた会社づくり
株式会社フレックスヴァリエーション代表取締役 加納 貴夫
フレックス制度の導入に込められた“真の狙い”
2016年の設立当初から、当社では営業職を限定に「フレックス制度」を導入しています。フレックス制度と聞くと、今や多くの企業が取り入れている“ありふれたもの”だと思う方がたくさんいるかもしれません。しかし、それぞれの社員が自分のパフォーマンスを高めやすい時間を設定でき、仕事にとことん打ち込めることができるこの制度は、働きやすい環境をつくる上で非常に効果的だと思います。
語弊のある言い方かもしれませんが、一般の営業会社には“この時間帯に電話営業をしなさい”とか“この時間までに絶対に報告しなさい”といった制約ばかりで、ストレスを抱える人がとても多いのが実情です。私自身もそのような縛りに疑問を抱く一人でした。
会社員時代、チームのマネジメントを担っていた私は、成果を上げられるチーム作りに注力していました。その際、最も大切にしたのはメンバーたちの理想の働き方やアイデアを尊重することでした。メンバーが現場で日々感じていることや、それぞれの閃き。そこには成果を出すための営業や働き方のヒントで溢れています。そして手段は一切問わず、メンバーたちが最も成果を上げられる環境づくりを最優先にした結果、チームの数字は右肩上がり。大きな成果に繋がっていったのです。
人に合う働き方はそれぞれ違います。働き方を縛ってしまうと能力のある人なのに力を発揮できないこともあるでしょう。私は、社員が発揮できるはずの能力を阻害する邪魔をすべて取り払いたいのです。全力疾走で仕事に取り組んでもらった方が私も嬉しいですし、その人も仕事の幅が増えることによってビジネスマンとして開花するはずです。どちらにとっても、良いことしかありませんよね。フレックス制度は、そのような想いにもとづいて導入したものです。
今後も会社側として良い環境を与えていきます。それに対して、社員も会社がそういう環境を作ってくれるのであれば頑張って成果を出す。そのような、お互いが信頼し合える会社をつくりたいですね。


「何か制度を導入する際は、特殊なことではなく、みんなが求めていることをやりたい」とおっしゃる加納社長。“社員ファースト”なコメントには終始、ブレがありませんでした。
ストレスやネガティブな考えは無駄なだけ 徹底的に解消したい
信頼関係をさらに深め、社員のパフォーマンスを下げる制限を取り払うためには、情報共有が欠かせません。当社では、チャットツールを活用してAさんとBさんが話した仕事の内容を共有するようにしていますし、私自身も隠し事はせず、なるべくオープンにしています。
仮に情報共有が十分にできず、話しづらい環境になってしまうと、他の人が何を話しているのか気になるばかりでストレスが募る一方です。場合によっては、自分の悪口を言われていると勘違いし、ネガティブな感情が頭の中を渦巻いて、会社を辞めてしまうこともあるかもしれません。そういったストレスほど“邪魔”なものはありませんし、ネガティブな考えに時間を費やすのは、本当にもったいないことです。
そのようなストレスやネガティブな考えは、情報を共有することである程度は防げるはずです。しかし、それだけでは万全ではありません。ストレスを抱えている社員がいれば、いち早く察知し、解消することが必要だと思います。例えば、社内の冷房の設定温度が低いばかりに誰か一人でも寒い思いをしているのであれば、“体調を崩さない温度は何度か”“他の人が暑さ対策をすれば解決できないか”と考えなければいけません。誰か一人でも何かに苦しんでいたらすぐに手を差し伸べる。そういう察知能力を社内に浸透させたいです。
みんなが仕事を頑張れるようにするためには、どうすればいいのだろう――。実にシンプルですが、私が会社を経営する上での考えは、そのひと言に尽きます。ストレスやネガティブな感情といった邪魔なものをすべて排除できれば、社員のみんなは思う存分、仕事に打ち込めるはずです。社員に対して平等に接することができているか、社員たちがストレスを抱えていないか、ネガティブな発言や考えをしている社員はいないか。常に目を光らせて、解決するように気をつけています。


体調が悪い社員がいればすぐに帰宅を促しているという加納社長。社員たちが高いパフォーマンスを発揮できる環境づくりを追求することで、働きやすさを向上させています。
2016年設立のスタートアップ企業 営業の仕組み化が急務
今後、早急に着手が必要なのは、営業活動の仕組み化です。現在は営業の大部分を私が担っている状況なので大きな問題は生じていませんが、営業活動をしやすい環境ができていなければ、社員が増えるにつれて問題が顕在化するおそれがあります。研修や教育制度もまだ確立していません。入社した方が業務を早い段階で覚え、早い段階で成果に結びつく仕組みを作ることが急務だと感じています。
成果を得るなら早いに越したことはありません。成果の数に比例して、成長するスピードも格段に速くなるからです。さらに、成果を頻繁に上げることは、モチベーションの維持にもつながります。成果をあげられない日々がしばらく続くと、モチベーションは落ちる一方です。特に営業は景気変動やお客様の状況などが大きく影響するため、起伏の激しい仕事です。
そのような仕事でも、新たに入社する社員がすぐに成果を得て、早い段階で自立できるサポート体制をいち早く構築していきます。現在はまだ構想段階ですが、さまざまな外部とのネットワークを活用した外部研修により、社員のやりたいことと会社側として習得してもらいたいことの両方を学べる機会を与えていきたいと考えています。
また、コミュニケーションを図る機会を増やすことも課題のひとつです。現在は私自身が限られた時間でしか社員とコミュニケーションを取れていないのが実情で、一人の社員のためにたくさん時間を確保することができていません。私はみんなのことをもっと知って、想いや将来のビジョンを共有したいですし、みんなの声を取り入れながら職場環境をどんどん良くしていきたいと思っています。もちろん、強制したくはありませんが、コミュニケーションを取れる機会は設けたいですね。


社員たちのプライベートも大事にしたいとおっしゃる加納社長は、「私の人生は不動産と音楽」と断言するとおり、音楽活動にも精力的。会社経営との両立を実践されています。