事業も福利厚生も、すべては社員の幸福のため
GCストーリー株式会社代表取締役社長 西坂 勇人
大好評のランチサービス きっかけは1人の社員のため
月・水・金曜のランチタイムになると、社員たちは幸せな表情を浮かべながら美味しくて温かい食事を次々と口に運んでいきます。グループ会社である豊受株式会社の手作りランチは社員の間でとても評判が良く、栄養もたっぷり。楽しみにしてくれている社員は大勢います。この「ランチサービス」は当社の福利厚生のひとつで、週に3日提供しています。
「ランチサービス」を福利厚生として導入したきっかけは、震災ボランティアで豊受株式会社の田頭社長にお会いしたのがきっかけでした。田頭社長は幼いころからアトピーを患っており、長年に渡って治療に試行錯誤なさっていたそうです。そんななか「食」による療法と出会い、アトピーを克服。さらには親御さんの病も快方に向かわせたのだそうです。
その話をうかがった瞬間、アトピーに悩んでいるある社員のことが思い浮かび、私とその社員のお弁当を作ってもらえないかと田頭社長にお願いしました。そして、実際にお弁当を食べていくうちにその従業員の症状が緩和したのです。さらに、味も美味しかったこともあってお弁当の評判はあっという間に社内に広まり、「私も作ってほしい」という声が殺到。多くの社員たちが望むのであればと、福利厚生として取り入れました。
「ランチサービス」をはじめ、当社が導入した社内支援制度や手がけている事業はすべて“全社員が幸せになるために”という考えがベースになっています。介護事業を立ち上げたのも、社員の両親に介護が必要となった場合、社員たちが両親のために何をすべきかを知ることがひとつの目的になっています。当社の社名のGCとは、成長(Growth)と貢献(Contribution)を意味します。貢献とは誰かの役に立つことであり、貢献するためには個人の成長が欠かせません。そのような考えのもと、将来ご両親を介護できる知識を養ってほしいと思い、介護事業を立ち上げました。
その他にも、月に1回全社員が参加して普段はなかなか話せない社員と交流できる「おむすびの会」や、社員の声を積極的に拾い上げてつくった制度を半期に一度リリースする「オープン人事ミーティング」などの社内支援制度を取り入れていますが、いずれも社員の幸福を追求することが目的になっています。


盛和塾出身で、「大家族主義」を大切になさっている西坂社長。時に厳しく時に優しく、我が子に接するように社員たちと向き合っているようです。
何のために生きているのか 悩んだ末に気付いた“成長と貢献”
私は学生時代からずっと、何のために生きているかについて悩み続けてきました。高校時代に勉強していた時は「勉強するために生きているの?」と自問自答しましたし、就職活動を経て社会人になった後も、お金や安定のために働いていると話す周囲の人たちの姿に疑問を覚えていました。そして、30歳で起業した時も答えはまだ分かっていませんでした。
まるで雷が落ちたかのように答えが見つかったのは、33歳の時でした。他の企業の社長や著名な作家さんとともに金融工学を学びにシンガポールに行った際、ある食事の席で「人生というのは結局、成長と貢献だよね」というひと言を聞いた時に「あぁ、そうか!」と腹落ちしたのです。それまでの自問自答の日々に決着がついた瞬間でした。それ以来、貢献のために成長する、という生き方はぶれていません。
とはいえ、“成長と貢献”は私自身にとっては大事な価値観ですが、他の社員たちが共感するとは正直思っていませんでした。なぜなら、それ以前は「面白いことを楽しくやろうぜ」と全く異なるスタンスで会社を経営していたからです。そのため、私だけは“成長と貢献”で生きていこうと決心したものの、私の考えを社員たちに押し付けはしませんでした。
それでも2008年に新卒採用をスタートしたのを機に、“成長と貢献”を少しずつ公言し始めました。すると、それを聞いて異を唱える社員はおらず、むしろ少しずつ社内に浸透していったのです。それ以来、まずは社員を幸せにして、できればビジネスパートナーや取引先も幸せにする。そして、その幸せの範囲をどこまで広げていけるかが、私たちの挑戦になっています。そのため、採用する際も私たちの仕事に興味を持った方ではなく、私たちの理念に共感できるかを基準に学生と接するようにしています。


採用選考では、複数回の面接後に合宿形式の最終選考を行っているGCストーリー株式会社。選考過程を重ねることで理念に共感する学生とのマッチングを図っています。
課題は、予想もつかない時代を生きる若手社員を幸福にすること
20代の社員が幸せな未来を送るために私に何ができるのか。最近、そんなことを考える時間が増えました。AI(人工知能)やロボティクス(ロボット工学)などの急速な進化によって、20年後には今の仕事のおよそ8割がなくなると言われていますし、少子高齢化も避けられない問題です。そのような時代のど真ん中を進む若手社員たちはどのように生きていけば幸せなのか。そして、彼ら彼女らが幸せになるために、私たちが力になれることはないか。そのことばかりを考えてしまうのです。
もちろん、注意しなければならないこともあります。20代の若者はデジタルネイティブ世代ですし、私たちの世代とは育ってきた環境も時代背景も異なるので、私たちの成功体験をそのまま押し付けることはリスクが高すぎます。ましてや、これからの時代はいつ、何が起こるのか予想だにできません。その状況下で、私たちの思考だけで仕事をやらせてしまうのは非常に危ういのです。
それでも、若手社員が幸福な人生を送れる方法を見出さなければなりません。そこで、当社では2018年2月から中間管理職を廃止し、フルフラットな組織へと変革しました。組織をフラットにすることで、社員一人ひとりが能動的に働くことになります。つまり、社員たちは創発性が刺激される環境に身を置くことになるのです。それによって成長スピードは速くなり、不確実性の高い時代においても“成長と貢献”を実現できる人材として活躍できると思います。
まだまだ変革の途中ですが、このような変化を繰り返しながら、新たな時代でも社員が幸せになれる環境づくりを進めていきたいと考えています。


「性格が良くて優秀な社員が多い」と笑顔でおっしゃる西坂社長。なかには、社員全員がオリンピック選手に見えると言って壁にぶつかる若手社員もいるほど、志の高い社員が多いようです。