子どもや職員が幸せになる「選ばれる保育園」を目指して
社会福祉法人 あざみ会事務長(理事) 川西 和弘
職員が前向きに働ける職場環境づくりへ
保育園というのは子どもを預かる場所です。ところが、現在の日本では少子化がハイスピードで進んでいます。これが何を意味するかというと、「選ばれる保育園」にならなければ今後の存続が難しいということです。
選ばれる保育園とそうでない保育園の違いはいろいろありますが、基準の一つとして、保護者が気軽に意見・要望を出せるかどうかという点は大きいと思います。私たちの保育園では意見をいただいたら、すぐにできること・やった方がいいこと・子どもたちや保護者のためになることは、迅速に進めたいと考えています。
その一方で、たくさんの子どもたちをお預かりしているので、保護者の方々からの要望をすべて応えられるわけではありません。そこで必要になるのが、なぜそれができないのかをきちんと説明するスキルです。ただお断りするのではなく、こちらから代替案を提示するなど、前向きな姿勢を見せることが大切だと考えています。いずれにせよ、気軽に意見が出せる園になりたいですね。
そうした環境を作るには、職員の働きやすさを高めることも重要です。子どもたちに携わる職員が前向きに働けるよう、園として努力しなくてはなりません。私たちは、子どもたち、保護者、職員の全員が幸せになれる保育園を目指します。それこそが、「選ばれる保育園」になる条件だと思っています。


取材班とすれ違うたびに、明るく元気に「こんにちは!」と挨拶をする子供たちの様子から、先生たちの愛情をたっぷりうけながら毎日のびのびとした環境で生活していることがわかります。
新卒の方はあいさつの仕方から丁寧に研修
私たちの法人グループでは、これから新卒採用に力を入れていきたいと考えています。もともとは新卒の方が多かったのですが、だんだんと経験者の採用が増え、今年は新卒の割合がかなり減りました。
そこで新卒採用を見直し、まずは初任給を改訂しました。もともと昇給率がよく、中途で入ってこられる先生方もそこに魅力を感じてもらっています。しかし学生さんの目が行くのはやはり初任給なので、金額の引き上げを決定しました。
新卒の方が生き生きと働くには、研修も重要だと思っています。私たちのグループでは年間に100種類の研修を行っています。立場や年次によって参加するものは異なり、自分の仕事に合わせて必要だと思うものを積極的に参加してもらっているんです。もちろん、業務の一環として就業時間中に受けられます。
新卒研修に関しては、学生さんの授業がなくなる3月頃に始めます。内容は社会人マナーや保護者の方へのあいさつの仕方など、基本的なものです。それから、結婚や引っ越しをした際の職場での手続き、各種書類等の提出方法など、当たり前のことについても一緒に確認します。
すでに働いている職員や中途入社の方は「そこからやるのか」と驚くこともあるのですが、そうした基礎の部分もしっかり教えることが、新卒で入ってくる方の働きやすさ向上につながると思っています。
1年目はどんな仕事をするのか事前にわかっているとより働きやすいと思いますので、実践的な研修も行って4月からの業務に備えます。そこからは、自分のついたクラス担任の先生に教えてもらいながら働いていくという流れです。


保育の世界に入ったのはそう早くはなかったものの、20代から自身の花屋を営むことで経営の第一線を経験している理事の知見は、美原保育園や法人の他の保育園運営にしっかりと生かされているようです。
率直なアンケートから自らを改革していく
私たちの法人は、「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言事業所」に手を挙げていきます。これは一定の基準をクリアした事業所を自治体が認証する制度のことで、いくつかのガイドラインが設定されています。
現時点では17個あるすべての項目をクリアしているわけではないので、2018年度は全項目達成を目標にしています。これをクリアすれば、きっと先生方にとって仕事がしやすく自慢できる職場になると思うんです。そうすればたくさんの方に長く働いてもらえて、保育の質の向上や、保育園の成長につながります。
そのためにまずは自分たちの評価を知ることが大切だということで、第三者評価という保護者の方のアンケートと、職員から法人全体へのアンケートを集めています。改めてアンケートをとることで日ごろ見えなかった部分が明らかになり、とても有益だと感じますね。
赤裸々に書いてくださいとお願いしているので、かなり痛烈なことが書かれていることもあります。以前職員からのアンケートで「上の人が行う変更についてわからないことがある」というようなことを書かれたこともありました。
これを読んで、園全体のことを考えて決めたことが現場にしっかり届いていないんだなと感じました。それからは「なぜこれをやるのか」「なぜこう変えるのか」といった部分も、きちんと明確に話すようになりましたね。
今後も職員方、保護者、そして子どもたちにとって自慢になるような保育園を目指していきます。私たちと一緒にこの園を盛り上げてくれる人に来ていただければ幸いです。


「お散歩先が豊富にある」と職員が口をそろえるほど、園のまわりの環境は良好。自然と触れ合うことにより、子どもたちの心が育ち、また職員の方々のちょっとした癒しになっているようです。