社員と同じ目線に立ち、社員と共に考える会社づくり
有限会社花屋代表取締役 田島 浩子
新しい制度は柔軟に取り入れる姿勢を持つ
当社は私の母が一店舗のファミリーマートを運営したところから始まりました。私が正式に入社したことで2店舗に増え、色々なご縁もあり、現在はファミリーマートのFC経営を4店舗任せていただいています。
私は働いてくれているスタッフは人財だと考え、スタッフが気持ちよく働ける環境づくりに努めています。その一環として、家族手当、家賃補助金、退職金、夜勤手当などさまざまな福利厚生を導入しています。当社は決して大きな会社ではありません。そのため、新しい取り組みも柔軟に取り入れることができます。なんでも一度やってみて、上手くいかなければやめようというスタンスで経営をしているからです。
そして2018年から当社は給与体系を改定することに決定しました。基本給を上げ、ボーナスを出来高制にしたのです。今までも達成数字によりボーナス金額の変動はありましたが、今回の改定で出来高の割合を多くしました。本人が頑張れば今までよりもボーナスの金額は増えますし、結果が思わしくなければ、金額は下がります。
私は社員が一生懸命働いてくれた分はきちんと還元し、社員が気持ちよく働ける会社づくりを進めていきたいと考えています。そのため、この改定が社員に悪影響を与えた場合は、給与体系を元の形に戻すことも厭いません。


花屋のボーナスは年に3回支給されます。田島社長は楽しみが多い方が社員のやる気にもやりがいにも繋がると考えていらっしゃいます。
大きな裁量権が、社員の成長に繫がる
私が給与体系の改定に踏み出せた理由は、店長の成長にあります。今のレベルであれば、きちんと利益を上げ、自らのボーナスもこれまでよりプラスにできる働きをしてくれるのでは、と期待をしています。
ここまで店長が成長した理由として、それぞれに与えられている裁量権が大きいことが考えられます。当社は全店の売上実績を店長に開示しており、それを参考にして店長自らが自店舗の利益目標とそれに向けた経営戦略を立てることができます。そして、この数値評価と行動評価がボーナスの数字に繋がります。大きな法人であれば、コンビニ事業の他にも様々な事業を手掛けているところも多いですが、当社はコンビニ事業の売上のみで成り立っています。そのため、会社の現状をきちんと知ってもらうことで、自分たちの仕事がどれほど会社に影響し、自分に還元されるのか正しく認識してほしいとの思いで、会社の数字に関わる部分も社員に知ってもらう経営スタイルをとっています。
最初の頃は上手くいかず、見当違いの数字を提出してくることもありますが、自分自身で考え、学んでいくことにより、徐々に数字管理が上手になっていきます。そしてその過程で小売業に関する知識やスキルを習得することができるのです。
小売業の知識は様々な職種に通ずることが多くあります。そして私は必ずしも〝コンビニの店長〟という仕事を一生の仕事にしてほしいと思っているわけではありません。もちろん、そう思っていただけるのはとても嬉しいことですが、社員にはここで多くのことを学び、自分のため、将来のために役立ててほしいです。


「社員がどんどん成長していく様子を見ているのが一番楽しい」とおっしゃる田島社長。社員たちがそれぞれの想いや考えを持って店舗をつくっていく様子を温かく見守っています。
働きやすい環境づくりのカギはコミュニケーションをとること
当社が第一店舗を出店したのは、今から約26年前です。当時と比べて街の様子は大きく変わり、現在では多くのコンビニが立ち並んでいます。そのなかで生き残っていくために私が目指すのは「強小」の会社です。つまり、小さくても強い会社にしていきたいと考えています。
そのためには、お客様に選んでもらえる店になる必要があります。そこで一番重要となるのが、働いているスタッフです。スタッフが良い接客をし、お客様にまた来たいと思ってもらえることが大切なのです。そして、スタッフに良い接客をしてもらうためには、スタッフが働きやすい環境づくりをしていく必要があります。その環境を率先して作らなければならないのが、各店の店長です。店長がスタッフとコミュニケーションをしっかりとり、良い関係を築くことがスタッフの働きやすさに繋がります。しかし、この部分はまだまだ当社の課題であると感じています。
この課題を解決するためにも、まずは社員のことをしっかりと知ることが大切です。細かいこと一つにしても、私自身が現場に行き、自分の目で見ないとわからないこともたくさんあると思っています。そのため、私に時間がある時は、店を訪ねてアルバイトスタッフからスタッフの様子を聞きにいくこともあります。現場に出て、何が課題となっているのか、何に困っているのかを理解してこそ、本当の意味で社員にとって働きやすい環境をつくることができると思うからです。


お客様と何かトラブルがあった際、社長は社員のメンタルケアも行います。「自分が現場にいた時間が長い分、スタッフの気持ちがよく分かる」とおっしゃっていました。