社員旅行に家族を無料招待 家族を大切にする理由
有限会社愛心代表取締役 長谷川 正通
会社の歴史は、スタッフとその家族の歴史
“人を雇う”ということは、“その人の人生を守っていく”ということです。そこで忘れてはならないのが、その人の人生には、ご両親やパートナー、お子様、恋人も大きく関わっていることです。つまり、一人のスタッフと深く付き合っていくにあたって、その人の周りにいる方々を無視することはできません。そうしなければ、スタッフの働きやすい環境はつくれないからです。
私たちの仕事は、どうしても拘束時間が長くなりがちです。そのため、仮にスタッフが働きやすいと思っていても、スタッフの帰りを待つご家族に迷惑がかかってしまえば、結局、そのスタッフにとって働きにくい職場になってしまいます。言い換えれば、家族の支えがあるからこそ、スタッフが当社で働き続けてくれるのです。当社では社員旅行や食事会に社員のご家族を無料で招待していますが、それはご家族に対する「いつもありがとうございます」という日頃の感謝のかたちなのです。
このような家族との交流が、愛心の歴史をつくってきました。当社のスタッフは比較的長い期間勤めてくれるので、結婚や出産など、スタッフたちの“人生のビッグイベント”をたくさん祝ってきました。さらに、スタッフの子どもが小学校に進学し、成人式に出て、さらに結婚相手を紹介してくれることもありました。その度に私は成人祝いや結婚祝いを渡しますし、まるで自分の孫のようにスタッフの子どもの成長を追っています。
会社の歴史はスタッフの歴史でもあります。当社を辞めてしまった人も含め、いろいろなスタッフやそのご家族との関係があって現在の愛心があります。そのような歴史を振り返られるのが、一番嬉しいです。


社員旅行や食事会の他にも、日帰りのイベントや新人歓迎会などに家族を招き、交流を深めている有限会社愛心。ご家族への感謝がその行動に表れています。
仕事も、家庭も、遊びも、すべて欲張ってほしい
生活を送っていく中で「仕事は仕事、家庭は家庭」と線引きする人がいると思います。しかし、私に言わせれば、それは割り切りではなく“手抜き”です。
たとえば、仕事において患者様とコミュニケーションを取れない人が、ご家族への気遣いができたり、同僚に気を配ったりすることなどできません。仕事はこの範囲内、家庭はこの範囲内、趣味はこの範囲内と仕事や家庭などに線を引くことは、自分の限界を自分自身で勝手に決めて、その範囲内でやればいいという手抜きにしかすぎないのです。
ましてや、仕事ができなければ家庭や生活は成り立ちませんし、自分の趣味や遊びが充実しなければ仕事にも家庭にも良い影響を与えないので、仕事も家庭も遊びも切っても切れないものなのです。
だからこそ、スタッフたちには、仕事も、家庭も、遊びも、すべて欲張ってほしいです。そのすべての面で喜べてこそ幸せな人生だと思うので、人生を深く、広くするために線引きはしてほしくないありません。
そして、人生を幸せにするものこそ、人間力です。相手が何を望んでいるのか、相手の真意は何なのか、などを理解できないと、仕事でも家庭でも先には進めません。そこで当社では人間力を養う一環として、グループ企業との交流の機会を頻繁に設けています。私たちのグループでは、デイサービスやクイックマッサージなど対人サービスを行う事業を展開しています。「人」に接する異職種の人との交流によって“気づき”を与え、思いやりや気遣いを磨く良い機会になっていると思っています。


スクール制度も愛心の魅力のひとつ。「基礎的な技術だけでなく、お客様への気遣いやおもてなしの心など、整体師として必要な総合的な能力を養うカリキュラムになっている」(長谷川社長)ようです。
当社は通過点で構わない 経営者を育てる想い
私が理想とする職場は、“経営者になれる会社”です。当社を巣立つスタッフたちが独立後も活躍するためには、技術だけでは足りません。技術、接客、知識、集客や経営のノウハウなどのすべてが備わっていなければ、開業しても食べてはいけないのです。また、独立しないにしても、企業が求める人材は、単なる組織のいち歯車ではなく、経営目線を持ったバイタリティあふれる人材です。そういった意味で、スタッフには“経営者”を目指してほしいと思います。
そして、そのための支援は惜しみません。柔道整復師(国家資格)の取得を目指す正社員のスタッフには、専門学校への通学で出勤日数が少なくなった場合でも、給料は減額せずに支給します。これは、スタッフが当社で働いている以上、人間らしい生活を送っていける環境を与えていかなければならない、という先代の想いを継承したものです。なかには、資格を取って辞めてしまう人もいて、その度に先代と一緒にショックを受けることもあります。
ただひとつ断言しておきたいのが、私たちは見返りを求めて支援しているわけではありません。そのため、たとえ資格取得後に辞めるスタッフがいても、「うまく想いが伝わらなかったね」と反省するだけですし、独立を目標とするスタッフや社内でキャリアアップを目指すスタッフに対しては、後押しをし続けていきます。私たちはあくまで通過点で構わない――それが当社の想いです。
■勤務体系を改革して、スタッフの負担を軽減へ
現在の課題は、勤務体系の柔軟化です。当社ではこれまで、スタッフ一人ひとりに患者様全員の情報を把握することを求めてきました。たとえば、堀切の「愛心整骨院」の場合、患者様200名の名前、症状、家族構成、職業などを全部覚えてもらうようにしてきたのです。その理由は、患者様のすべてを知らなければ、その患者様にとって最適な解決策を提案することができないからです。そのため、患者様の情報が最も大切ですし、それは今後も変わらないでしょう。
その情報をスタッフが網羅するためには週3日で数時間程度の勤務では足りないので、フルタイムでの勤務をお願いしてきました。今後は、この勤務体系を変えるつもりです。すべての患者様の情報を把握するのは店長クラスのスタッフに任せることで、スタッフの負担を軽減させるとともに、希望のスケジュールで勤務できる体制に切り替えていきます。


独立後も経営のアドバイスや業者の紹介など巣立っていったスタッフへの支援を惜しまない有限会社愛心。「困ったときに手を差し伸べるのは当たり前」という長谷川社長の言葉が印象的でした。