社員と一生働くために~家族のための社内報を作る理由~
株式会社サティス製薬代表取締役 山﨑 智士
最も大切な人は社員 その次が社員のご家族です
「社員の、社員による、家族のための社内報」のキャッチコピーのもと、当社では社内報を毎月制作しています。読み手は、社員の家族です。家族の元へ会社から郵送をしていまして、ご実家にも郵送をしています。自分の娘や息子が、どんな会社で働いているのか、どんな仕事をしているのか、どんな活躍をしているのか、どんな仲間たちといるのか、会社は現在どのような課題と向き合っているのか、社長はどういう人間なのか――それらを、知ってもらうため、社員自らが毎月のテーマを決め、情報を集め、編集し、社内報としてご家族に発信しています。
なぜ、家族に向けて社内報をつくっているのか。その本質的な理由は、社員たちに一生サティス製薬で仕事をしてもらいたいから、です。その実現に、ご家族の支えも時に必要と考えています。仕事でくじける事ってありますよね。特に当社は化粧品業界の“進化”へ本気で挑んでいる会社なので、数多く立ちはだかる厚い壁を打ち破らなければならないわけですから、当然のこと、挑戦に失敗することも多いのです。
仕事でくじけた時、こんな時に大事なのは、失敗しても翌日には元気に出社する、”速やかな気持ちの切り替え”です。昨晩の「もうダメだ」を、今朝には「今日もやるぞ!」にする。でも、その"気持ちの切り替え”が自身だけでできない時もあって、その時は身近な理解者の助けが必要です。その存在が家族であると私は思っているのです。しかし、ご家族が支えるにしても、会社の状況が分からないことにはコミュニケーションはとれません。そこでご家族と会社との情報格差を埋めるために社内報を制作することを始めました。
そして、社内報は退職した方々にも送っています。私の会社づくりのコンセプトは大「家族経営」です。社員はみんな私の家族です。家族ですから、期間や条件で関係性が切れることはありません。社員とは一生付き合っていきます。たとえ会社を辞めてしまったとしても、いずれはまた戻ってきてほしい。私たちは出戻り大歓迎です。だからこそ、辞めていった社員が“浦島太郎”にならないように会社の情報を届けて、帰ってきやすい状況をつくっています。
私は社員と一生付き合う覚悟で、社員たちと向き合っています。私の一日は社員のためにありますし、ご飯を食べて栄養を摂るのも社員のためです、これは大げさではなく、本気で思っています。


“一緒に働きたい人物像は?”の質問に「正直、考えたことがないんです」と一笑した山崎社長。そのなかで「色んなタイプの人と働きたいですから。そして“家族”になって同じ使命と想いを共有すれば、どんな人でもすごいエネルギーを発揮してくれます」と同じ方向と温度感で働くことの重要性をあげてくださいました。
運命的な出会いを探すための「教養期間」
恋愛と同じように、仕事でも「なんだ、このトキメキは!」といったような、運命的な出会いをすることがあります。そのようなワクワク・ドキドキする仕事との出会いこそが、成長意欲をかきたてるのだと思います。
ところが、新卒社員たちは、“開ける扉はひとつしかありません”と言わんばかりに視野がとても狭い状態で入社する人が少なくありません。学校でやってきた事の延長に、自分の仕事や役割を置きにくるんです。理系なので研究がやりたいです、みたいな感じです。若くて可能性をたくさん秘めているにもかかわらず、そう決めつけてしまうことは極めて勿体ないことです。
そこで当社では入社後2年間を「教養期間」として、当社が行っている業務をひと通り経験してもらっています。そのねらいは、当社の幅広い仕事の中から運命的な出会いを探してもらうことです。あくまで教養期間なので、どの仕事に対してもコミットメントは求めません。まずは運命的な出会いをしてもらう、それからその分野のプロフェッショナルになる努力に集中してもらっています。急がば回れで、結果的にこの方が成長が早いです。
もちろん、その2年間で自分の将来を決めることが難しい事もあると思います。なので、教養期間後も自分の新しい可能性を見出すためにジョブチャレ(ジョブローテーションのこと)による部署異動を認めています。
■社員の“居場所”をつくることが私の仕事
教養期間もジョブチャレも、社員が「ここにいていいんだ!」と思える居場所を見つけるための取り組みです。この“居場所”という言葉は私にとって非常に大切なキーワードであり、働いている仲間たち一人ひとりに居場所をつくることが、私の仕事だと思っています。
そして、社員たちと一緒に居場所を見つけられるように、 “3つの実感”を得られる会社づくりを進めています。1つ目が、前年と比べて明らかに実力がついていることが感じられる「成長」の実感。2つ目が、誰かの役に立てていることや、自分がいるから仕事が成り立っていることを味わえる「貢献」の実感。そして、3つ目が自分たちの仕事を家族や知人に自慢できるような「誇り」の実感です。
そのうちの「成長」と「貢献」を実感できるクロスポイントを探し出し、そこを居場所にしてもらうことが理想です。そして、その結果が「誇り」の実感につながっていくのだと思っています。


ジョブチャレの成果を伺うと「短期的には当たりだハズレだと一喜一憂してますが、長い目で見れば成長しています」と山崎社長。ジョブチャレを活用した社員の方々はそれぞれの新たな居場所を発見しているようです。
最高の福利厚生は教育 社員を育てる3つのステップ
当社の福利厚生は特に充実しているわけではありません。福利厚生を検討・決定するときは、先ほど述べた“3つの実感”を得られるものにしています。なぜなら、私たちベンチャーにとっての最高の福利厚生は教育だからです。
私は教育するうえで3つのステップがあると考えています。ステップ1は、教養期間やジョブチャレにより、教育を受ける“居場所”を決めることです。
そして、ステップ2では、その居場所での「学習」と「経験」の提供です。
学習面では、ライブラリーを活用した「読書会」「ポータブルスキル研修」「インストール会」などを行っています。
当社には、一冊一冊厳選された書籍を豊富に所蔵しているライブラリーがあり、社員それぞれの“居場所”に応じて読むべき本がわかるレイアウト構造になっています。そのライブラリーから書籍を選び、複数人で議論を重ねるのが「読書会」です。一人だけで本を読んで得られる知見には限りがあります。しかし、さまざまな人の知見を共有することで、そのテーマについてより広く、深く理解できる、これが読書会のメリットです。
また、「ポータブルスキル研修」では外部研修によってコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、ファシリテーション能力といった基礎能力を養い、「インストール会」では各部門の業務で必要となる実務的な知識を習得してもらっています。
一方、経験面では、「綺麗アドベンチャー」を実施しています。これは、化粧品の購入に対して1人あたり年間12万円の資金援助をする制度です。化粧品は現在、日本全国で20万点以上が流通しています。そのようなレッドオーシャンで、私たちはどんどん自社の製品への切り替えをしていかなければなりません。そのためには業界全体がどのようになっているのかアドベンチャーする必要があります。ところが、化粧品は高価なもので、なかなか手を伸ばせません。そこで「綺麗アドベンチャー」によって普段は買わない化粧品にあえて手を伸ばし、自分の経験値、価値観を広げてもらうことを期待しています。
■社員がもっと挑戦できるために仲間を増やしたい
以上の「学習」と「経験」の合わせ技で学習効果を高めることが、教育のステップ2です。そして、ステップ3が、受けた教育を生かす機会の提供です。そのなかで私が留意しているのが「情報の提供」と「時間の提供」です。
情報の提供の取り組みでは、年に4回必ず全社員が集まる場をつくること、欲しい情報を主体的に収集するために他部署の会議にも自由に参加できること、そして、私が毎週ローテーションで社員と食事をして会社の将来について話す「社長と語ろう会」を行うこと、主にこれらの取り組みで情報の共有を図っています。
一方、時間の提供では、社員たちが挑戦できる時間の確保を進めています。当社の特長は、同じ規模の競合他社と比べて社員数が圧倒的に多いことです。営業部は他社の4~5倍の人員がいますし、研究や開発部門はそれがさらに顕著です。それでも人手が不足しているのは、社員全員が挑戦していることの表れでしょう。これからも仲間を増やすことで、社員たちにもっともっと挑戦する時間を用意していきたいと考えています。


2017年にはM&Aにより新たな業界への参入チケットを手にした山﨑社長。今後は化粧品だけでなく総合的な製品・サービスで、皮膚トラブルを抱える人々の悩みを解消していきます。