最近購入したのは老人ホーム~社員の人生に寄り添った会社作り~
尾張陸運有限会社代表取締役 伊藤 敏彦
社員には楽しく生きる術を教えたい
私の経営者としての目的は、社員全員が幸せになれる会社を作ることです。そのため、当社は理念の一番目に「全社員の物心の充実」を掲げています。なぜなら、まずは社員が幸せにならないと、お客様に対しても良い仕事ができないと考えているからです。
私が代表に就任した当初は、自分に自信がなく、仕事に誇りも持てませんでした。しかし、今は自分が一生働ける仕組みを作ることで、社員たちの手本になりたいと思っています。そのため、ここに入社する社員にも仕事のなかでやりがいや生きがいを手に入れ、誇りを持てるようになってほしいです。
私が社員に教えたいのは、働き方ではなく生き方です。なんのために人生を歩むのか分からないのはかわいそうだと思っているからです。楽しい人生を送ってもらうためにも、社員には夢を持ってもらいたいです。そして私はその夢を一緒に叶えていきたいです。社員が夢を持って働けるよう、当社では段階を踏んでキャリアアップできるようなステージを作っています。本来の自分の仕事にプラスアルファで他の仕事をすることで、自分のスキルを増やしてもらいたいからです。
当社にも夢を持っている社員がたくさんいます。そして夢はその人の伸びしろです。夢を持つことで、自分の能力を伸ばし夢を叶えようとするからです。私も経営者として経験してきたこと、学んできたことを社員に伝え、社員と共に夢を掴みたいです。


「経営」仏教用語。人の道をきちんと歩む者のことを言います。経営者は人を救うことが仕事であり、私自身人を救うことを目的にこの仕事をしていますと語る伊藤代表。
お客様から感謝されなければ存在価値はない
私たち運送会社の仕事は、ものを運ぶことです。しかし、ただものを運ぶだけでは存在価値が無いと私は考えています。なぜなら、ものを運ぶことは作業だからです。私たちがやらなければならないのは仕事です。仕事とはお客様を喜ばせることです。喜んでもらい、感謝してもらえることで初めて存在価値が生まれます。極論を言ってしまうと、私たちはお客様を喜ばせることができればお金をもらうことができます。
喜んでもらうというのは、感謝されることです。そして人から感謝されることは、人間としての幸せにつながります。全社員の幸せを願う私にとって、相手から感謝される社員を育成するというのは、とても大切なことです。
しかし、この育成がとても難しいです。組織が大きくになるにつれ、私の声も届きにくくなりました。私が考える「感謝される人」の基準はとてもシンプルです。人間的な基礎ができていて、人から信頼される人です。
相手を喜ばせるには、相手のことを思った行動をとらなければなりません。そのためには、まず自分が人として適切な行動をとれている必要があります。挨拶をする、掃除をする、靴を揃える、話を聞く。こういった基本的なことです。そうすれば大体の人は信用してくれます。能力は経験で磨くことができますが、社会人として恥ずかしくない人間にするためには、きちんとした教育が必要です。これさえできていれば、どこに行っても大丈夫。その社員の将来を明るいものにすることができます。


入口はドライバーでも、出口の可能性を多く用意している尾張陸運。夢をもっている社員が多く在籍しています。
定年は無く、71歳の社員も在籍
私の目的である全社員の幸せを実現するためにも、社員の人生に寄り添い、長く働ける会社を目指してきました。社員が仕事のモチベーションを上げられるように、目標を達成した際は、会社でしかできないことをインセンティブとして与えました。利益をトレーニングジムやサウナ、アスレチックを建設することに使い、社員が遊べる場所を作ったのです。お子さんがいても安心して働けるように託児所も作り、介護離職をなくすために老人ホームも購入しました。
またご家族の支持を得て働くことができるように、年に2回の家族イベントもありますし、12月にはご家族に向けてクリスマスケーキも用意しています。社内報も発行していますので、社内の様子を知ることもできます。
そして10年後、20年後も社会の影響を受けずに、グループ内で一生働ける会社作りをしています。そのため、当社には定年は存在しません。現在の最年長社員は71歳です。働きたいと思う社員がいれば働くことができるようにしているからです。
社員の衣食住全ての面倒も会社でみられるようにしています。まず住の面倒をみるために社宅を多く用意しました。今後は社員の食を賄うために、農業にも仕事の幅を広げようと考えています。このように、衣食住に関わることを自社でできるようになれば、長く働ける社員が増えますし、こういった取り組みを行うことで社員の定着率も良くなりました。


目先のお金のことだけでなく、同じ方向を向いて理想の会社を一緒に作ってくれる人と一緒に働きたいとおっしゃっていました。