隣の人の仕事を知ることが「働き方改革」への第一歩
エヌシーアイ総合システム株式会社取締役(HMO) 福西 弘晃
労働時間短縮だけが働き方改革ではない
私はHMO(Humancapital Management Officer)という立場で、社員の働きやすさ向上を使命にしています。世間では働き方改革が叫ばれていますが、労働時間短縮や休日の増加といった面ばかりに目が向けられています。そうした数字に注目するのも大切ですが、もっと根本的な「生産性を高くする方法」を考える必要があると思います。
短い人生の中で、仕事だけでなくプライベートも楽しまなくては損。だからダラダラ働くのではなく、生産性と効率性を上げる必要があります。そのために、どうするのか。いきなり大きなことを成し遂げるのは難しいですから、当社ではまず「隣の人の仕事を知る」ことを始めました。
私たちはチームで動いているものの、自分の仕事に集中しすぎて周りが何をやっているのか見えなくなることもあります。隣の人が何をしているのかすら知らず、後工程になって「ここが抜けている」と気づくような失敗もしてきました。
開発工程の終盤で発覚した失敗を取り戻すのは、時間も根気も必要です。しかし、隣の人が何をしているか理解できていれば、全体として足りない部分を初期段階で発見でき、失敗を未然に防ぐことができます。
隣の人の仕事を知ることは、残業の削減にもつながります。「この人はこれができるから頼もう」「この仕事は自分も手伝える」と少しずつ負担をシェアして解決できるからです。
それに、自分の仕事を分かっている人が他にもいるというのは、心理的負担もかなり軽減します。ちょっと半日休もうと思ったときにも、あの人がいるからとりあえず大丈夫と思えるのは心強いはずです。
当社では人材育成、働き方改革の重要性に鑑み、人事部門を側面から支援することを目的に、HMOなる役職を設けております。私は、2017年の夏からその任に就き、“隣の人の仕事を知る”という考えの浸透に努めています。周囲の人の仕事を知るには、まずはその人とコミュニケーションをとらなければなりません。すると必然的にチームの絆が深まるのです。その結果、お互いに助け合うことが増え、つまらないミスも減ってくる。その成果は少しずつ生まれ始めています。


「やる気スイッチがある場所は、人やタイミングによって違います。一人ひとりと向き合うことでスイッチを探し出し、モチベーションを高めることもHMOの役割です」とおっしゃる福西HMO。
NCI-SEとして世の中にないものを作り出す面白さがある
当社は常に新しいことにチャレンジすることを目的に設立された会社であり、当社SEは新しいことをやろうとしているお客さんに色々なフェーズで寄り添えるような「NCI-SE」を目指しています。これはプログラマーやプロジェクトマネジャーなどの肩書きにこだわらず、多種多様な役割を一人で対応できるSEです。「自分はテスターだからこれしかやらない」という人よりも、「面白そうだから、これもやってみよう!」と思える人の方が、成長スピードは圧倒的に速いのです。
当社では、ある案件でプロジェクトマネジャーを担当していた人が、次の案件では設計を担当しているということが日常茶飯事です。これは、「隣の人の仕事を知る」という当社の働き方改革に通ずるものがあります。一つの仕事しかわからないのであれば、隣の人の仕事も理解できない。しかし、各々ができる仕事の幅が広ければ、誰かが困ったときに、みんなで助け合うこともできます。
そして当社には、独自のビジネスに加えて両親会社グループ(新日鐵住金・伊藤忠商事)との連携があります。新事業の展開には新しいシステムの開発がつきものですので、当社は両親会社グループの新規ビジネスにあわせた、まだ世界にないシステムをつくり上げてきました。
例えば、まだインターネットが現在のように普及していなかった時代、世界中の事業所を全てつなぐシステムが求められていた際には、今でいうメッセージシステムを作り、海外との連携を容易にとれるようにしたという成功事例もあります。
このように新しい事業と新しいシステムが結びつくと、面白いものが生まれます。これが実現できるのは、NCI-SEというマインドが社内に浸透しているからです。自分の仕事だけやっていればいいという考えではなく、「面白そう」という理由で飛びついて、自分たちで考えて仕事を成し遂げ、達成感を得る――そういうサイクルがまわっているのが特徴です。


仕事をしていて、お客様やパートナーに喜んでもらうのは当たり前。エヌシーアイ総合システムではさらに一歩踏み込んで、「社員や家族に、NCI社員でよかったと思われる」ことを目指しています。
人を成長させることが自分の成長につながる
当社では研修において、早いうちからチューターを務める機会があります。例えば、3年目研修では、入社3年目の若手が新入社員を指導します。人に教えるには、まず自分がその内容を理解していないといけない。だからチューターという立場になると、より勉強をするチャンスが増えるし、「そもそも勉強ってなんだろう」と考えるようになる。こうなると、物凄いスピードで成長していきます。
テクニカルな研修に関しては、自分で勉強できるものが多いです。そのため、自己啓発により技術力を高めた社員に対してはきちんと見返りも用意しています。資格報奨金制度を設けて、最大20万円の報奨金を与えているんです。私が若いころは「そんな資格は取得して当たり前」と一蹴されたりもしましたが、現在は努力した社員にはしっかりと還元する制度を整えています。
■ 立ち止まる時間を持つことで、人はもっと成長できる
当社の課題は、まだまだ規模が小さいことです。120人(※2017年10月末現在)しかいないので、余分な戦力がありません。だからこそ社員一人一人が役割意識を持ち、SE一人あたり売上高4,000万円超という高い生産性を維持していますが、「立ち止まって振り返る」という時間がなかなか持てません。
スピード勝負の世の中なので立ち止まっている暇もありませんが、そんな中でもきちんと振り返る時間を持てる人間は、どんどん成長していきます。今日の仕事にどんな価値があったか、もっとうまくやれたのではないか。このように考える時間があると、明日は今日の1.5倍の生産性が生まれるかもしれません。
だからこそHMOとして、こうした振り返りの時間を作っていきたいと思っています。走りながら考え、考えながら走るなんて言葉もありますが、一度立ち止まることの重要性をみんなで認識していきたいです。


「ゲームも仕事も簡単すぎると飽きてしまう。壁を乗り越えてこそ達成感を得られる。だから、あえて難しい課題にトライする人材を求めています」とおっしゃる福西HMO。エヌシーアイ総合システムには、その挑戦をバックアップする体制が整っています。