年に4回の表彰式を実施 ~定着率120%の真実~
株式会社ワッフル代表取締役 和泉 利明
仕事は二の次 大切なのは“何を”ではなく“誰と”するか
ワッフルでは年に2回、社員旅行へ行きます。さらに表彰式は年に4回行い、直近3カ月間で最も活躍した社員を表彰しています。年に4回というと「多すぎるのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、当社がそのようにしているのには理由があります。
もともとは、社員旅行も表彰式も1年に1回だけでした。しかし、働く社員の姿を見ていて、ふと「1年に1回は少ないのではないか」と感じました。「表彰が1年に1回」ということは、社員たちは1年間走り続けなければならないことになります。私自身も営業として働いた経験があるので分かりますが、1年間全力疾走し続けることはつらく、大変なことです。正直なところ、どんなに優秀な社員でも中だるみしてしまうときがあると思います。そこで、表彰式の回数を増やし、社員が全力疾走する区間を短く区切ることで、無理なく走り続けられる環境をつくっていこうと考えたのです。
実際、この表彰式を年4回に増やしてから、社員の成長スピードが飛躍的に向上しました。表彰式が行われる度に、明確に区切りをつけることができるので、常にモチベーションを高い状態に維持しやすくなったのだと思います。
また、社員旅行の回数が多いことにはもう一つ大きなメリットがあります。それは、社員同士のコミュニケーションを深められることです。
みなさんは「小学生の頃は嫌いな科目はなかったのに、中学生になると嫌いな科目が出てくる」という話をご存知でしょうか。小学校では担任の先生がほぼ全ての科目を教えるので、その先生のことが好きなら勉強も好きになりますが、中学校では科目ごとに先生が変わるため、嫌いな先生の科目は嫌いになってしまうそうです。
私は仕事も同じだと考えています。上司や同僚が嫌いだと仕事も嫌いになる。逆に、一緒に働く人が好きだと、自分には合わないと思う仕事でも好きになり、やりがいを見出せるまでになります。私にとって仕事内容は二の次です。大切なのは一緒に働く人だと考えています。「コミュニケーションを取らなくてもいい」とか「自分のことだけやっていればいい」という人間を私たちは求めていません。新卒の会社説明会では毎回、“何を”するのではなく“誰と”するかだということを伝えています。絶対にそうであると確信しているからです。


ワッフルの社名の由来は「和+Full」。和泉社長の頭文字であり、日本を象徴する「和」には“一緒に働く仲間を大切にしたい”との想いを込めたとのこと。そして、それを最大限に膨らませる意味の「Full」。“誰と働くか”を大切にする社風を表した社名です。
働きやすい職場づくりが、定着率120%を生んだ
社員旅行を行わない月も、積極的に社内コミュニケーションの活性化を図っています。最近始めた取り組みが、部署間の隔たりをなくすためのディスカッションです。
部署が異なると、どうしても部署間の軋轢が生じてしまいます。そこで、普段の業務では接点が少ない社員同士が研修でグループワークを行い、研修後にはそのグループで食事をして交流を深める機会をつくっています。
また、毎月のトップ営業マンを当てる投票制度も社内コミュニケーションを深める取り組みのひとつです。この投票制度は、事務職の社員が月間トップになる営業マンを予想して投票し、見事的中すれば私と月間トップの営業マンとその営業マンに投票した社員で食事に行くというものです。
投票制度を始めた理由は、事務職は営業とは関係ないと思われるのが嫌だったからです。マーケティングは会社全体で行うものです。だからこそ、「私は事務職だから関係ない」と思うのではなく、「私は会社の成長に関与できている」と実感してもらいたい。この投票制度は営業マンの働きぶりを見れば見るほど的中する確率が上がります。とにかく社内全体を見てほしい。そして、会社にとって“大切な社員の1人”であることを感じてほしいです。
私には昔、自分のことしか考えていなかった時期がありました。その時期はどれだけ売上を上げても上司には認めてもられず、部下もついてきませんでした。当社を設立した後も「辞めます」と言って会社を去っていった社員も少なくありませんでした。
今振り返ってみれば、そのような経験がもとで「社員に残りたいと思ってもらえる会社づくり」をしなければならないという想いが芽生え、徐々に私の考えの核に変わったのだと思います。そして、自分のことを考えるより他人のことを考えるほうが楽だし幸せになれる、と気づいた途端、辞める社員はパタリといなくなりました。
それどころか、ある日社員に誘われて食事に行くと、その社員の知人を紹介されて「和泉社長と一緒に仕事がしたいです」と直談判されたこともありました。定着してくれる社員がまた新たな社員を紹介してくれるようにもなったのです。まさに“定着率120%”。それ以来、社員を最優先に考えた会社経営を大切にしています。


より多くのことを学ぶため、現在大学院へ通っている和泉社長。そこで得た知識を基に 会社の経営基盤を見直し、整理。直接財務の方に会計についての指導も行っていらっしゃいます。
数字が上がっていないことだけを注意する上司は無能だと思います
私は優秀な人間ではありません。自分自身を客観的に見ても、足りないものばかりです。それを補うために2017年4月、MBA取得を目標に大学院へ通い始めました。最初は抵抗がありましたが、優秀な方と一緒に経営に関する知識を体系的に学ぶのが、結構面白い。その反面、経営学や会計などを学ばずにこれまで経営をしてきたことの恐ろしさも痛感しています。
勉強によって得た知識によって会社の経営基盤を根底から見直し、改善できるところを着手したいと考えています。そして現在、すぐに取り掛かりたいのが“仕事の見える化”です。
営業の話で言えば、現状では上司が部下を“感覚”で指導し、営業マンも“感覚”でお客様に対応しています。しかし、それはナンセンスです。今後は感覚で行なってきた仕事をすべてデータ化し、問い合わせからアポイント、申し込み、契約に至るまでの数やアベレージなどを数値化。会社全体、課別、個人別の成績を四六時中、社内のモニターに流したいと考えています。
そうすることで営業マンは自分の足りない部分を客観的な数字で認識でき、「なぜ自分は決定率が低いのか?」と自発的に質問するようになります。上司から一方的に注意されるのではなく、聞く耳を持った状態で質問するので、上司の指導を受け入れるようになりますし、理解度も高まります。
また、上司の指導も、感覚ではなくデータに基づいたものになります。そのため、月末の追い込み時期に、データで「契約まで平均1カ月間を要する」と算出された業務を命じるような“藪から棒”の指示はしなくなるはずです。
私は、成績が上がっていないことだけを注意する上司は無能だと思っています。大切なのは、成績が上がらない原因となるプロセスを注意することです。そのプロセスも含めたすべての業務をデータ化できれば社員たちの働きやすさが向上し、成長のスピードも加速するでしょう。
“仕事の見える化”の実現は大きな課題です。しかし、それに見合うメリットが豊富にあります。だからこそ、今すぐにでも実現させたいです。


残業は非効率だと語る和泉社長。残業は効率の悪い人がなる現象なので、基本的には必要ないとの考えをお持ちです。