たとえ別の道に進もうと、活躍できる人材であってほしい
有限会社伊藤動物病院代表取締役 伊藤 雅彦
大切にしてほしいのは、飼い主さんの想いに寄り添う気持ち
当院では飼い主さんお一人おひとりの気持ちに寄り添った処置やサービスを大切にしています。飼い主さんにとってペットは大切な家族です。家族が病気になってしまい不安な思いをされている方もいらっしゃいます。
我々の仕事は動物の病気やケガを治すことですが、飼い主さんと想いを共有することで、飼い主さんの不安を払拭するお手伝いもできるのです。
スタッフとよく話をするのですが、「健康」であることはとても大切なことであり、「不健康」であることは不幸なことです。たとえそれが動物であっても、その家族の中でいえばひとつの不幸なのです。それを改善し、良い方向に導いてあげることが我々の役割です。もし改善が難しかったとしても、その不幸の中身を少しでも飼い主さんの悩みに持っていかないように対応することで、負担を軽減することができます。
スタッフたちには、日頃から親切丁寧な対応をお願いしています。
時には治療以外にもアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることも大切です。実際に当院で働くスタッフさんたちは人柄の良い方々ばかりで、飼い主さんとも積極的にコミュニケーションを図っています。
私自身、採用にとても注力しています。スタッフの数が足りないからといって、無理に採用をしてもミスマッチに繋がりますし、意味がありません。当院にとってだけではなく、その方も貴重な時間を割くわけですから、その時間が無駄になってしまいます。当院が大切にしていることに共感してくれているスタッフがいるからこそ、安定的にサービスを提供し続けられているのです。


とても物腰の柔らかい伊藤院長。スタッフとの会話の節々からもとてもフランクな雰囲気を感じました。
「おごり」は退化 互いに学び合う環境づくり
当院で活躍しているスタッフに共通することは、向上心を持っていることです。最初の頃は上手くいかないことを注意されることもあるでしょう。しかし、そこでふてくされるのではなく、自分の足りない部分と真摯に向き合い、常に改善に努めています。
特に当院には15年以上のキャリアを積んだスタッフが在籍しているため、学ぶ意欲があればいくらでもスキルを磨くことができます。この業界で10年以上のキャリアを持っている人材はそれほど多くはいないので、高度な技術やノウハウを学べる環境は当院の強みのひとつでもあります。
一方で、教育制度や研修制度などの社内制度の整備にはまだまだ課題が残ります。今後は公的なセミナーや外部研修などにも積極的に参加できるような制度を導入していきたいと考えています。
動物病院のビジネスは、すでにできあがったビジネスだと考えています。しかし、人間誰しも、ある程度の仕事ができるようになると、そこで満足してしまいます。つまり、「おごり」が出てしまうのです。それ以上の高みを目指せば、苦労するとわかっているので、目指すことを辞めてしまいます。
しかし、自分にはない素質やスキルを持った人材と出会ったときに「自分はまだまだだ」と気づくことができるのです。実際、私も学会に参加した際に色々な人と出会い、その度に刺激を受けています。
やはり最高レベルの人材と関わり合うことは、人間的な蓄えや自分自身の向上心を湧き立てる良い機会にもなりますので、今後は当院以外の方々とも関わりを持てるような機会を積極的につくっていきたいと考えています。


仕事に対して妥協をしない伊藤院長。厳しさのなかにも「成長させたい」という愛情が伝わってきました。
トップに立つ人間こそ、よく働かなければならない
結婚や出産、子育てなど、女性には人生のターニングポイントが多くあります。そのため、スタッフの都合に合わせたシフト組みや長時間労働の是正に注力しています。特に大切にしていることは、スタッフ数の充実です。人材が不足すると、必ずその不足分が他のスタッフの負担になってしまいます。スタッフが足りず、苦しいときは私自身が現場に立ち、スタッフのフォローを行っています。
これは私の持論ですが、トップに立つ人間こそ一般社員のように働くべきだと思います。ひとつのチームで言うなれば、指揮命令を行う監督ではなく、常にプレーヤーとして存在している意識を大切にしています。この意識が欠けてしまうと、それが「おごり」になってしまいます。自分の立ち位置におごらないための戒めのような意味合いも含んでいます。
経営者の使命は、スタッフにとって働きやすい環境をつくることだと思います。働いていれば悩むことも不満に思うこともたくさんあると思います。しかし、何かが嫌で退職しなければいけないような事態にはしたくありません。助けを必要としているのであれば手を差し伸べたい。そこで助けになってあげられれば、今度はその人が別の困っている人を助けるような人材になってくれるはずです。そのような繋がりが続くということは、その方々の人間的な成長にもなりますので、今後も大切にしたいと思います。
当院で長期的に活躍していただければ一番嬉しいのですが、時には転職や結婚、出産を機に退職したりすることもあると思います。しかし、どの道に進もうと活躍できる人材であってほしいですし、良いお嫁さんになってほしいというのが私の想いです。やはり一緒に働いていたスタッフが褒められれば、私にとっても嬉しい限りです。


「スタッフが褒められれば嬉しい」と笑顔でおっしゃる姿はとても温かく、伊藤院長の優しい人柄を感じられました。