やる気は時に知識や経験を超える。やる気こそ成長の源
イー・バレイ株式会社代表取締役 池田 徹弘
社員の将来を見据え、一人ひとりに合わせた研修を実施
未経験者の育成に注力しよう――。採用方針を転換したのはリーマンショック後でした。
もともと当社では、即戦力となる中途社員の採用を積極的に行っていました。私どもの仕事の要は技術力ですから、経験のある方を採用し、すぐに配属先で活躍いただいた方が会社としてもありがたかったのです。しかし時代の流れとともに売り手市場が強まり、即戦力の採用が困難になっていきました。
前述した通り、人材がいてこそのビジネスです。私たちは即戦力の採用から未経験の採用へと舵を切り、人材育成に注力することにしました。それからはトライ・アンド・エラーの日々。各部門長と相談しながら採用活動を進めていき、2012年度は2名だった採用人数も翌年は21名まで増やすことができました。しかし、結果としては1年以内に10名の社員が退職していきました。
ゼロから育てていくという方針を共通認識として取り組んでみましたが、その手法が会社として定まっていなかったことが、多くの退職者を生んだ原因でした。
特に研修期間内に退職してしまった社員たちは、「研修内容についていけない」「周りの熱量とのギャップ」などに焦りを感じていたようでした。しかし、その当時は新入社員の不安に気づいてあげることができませんでした。しっかりと教育していこうと思うあまり、知らず知らずのうちにそれが定型的なものになってしまっていたのです。それでは人は育たない。社員それぞれの進捗状況やモチベーションに適した内容へ変えていかなければ、その流れに乗れない社員は途中で諦めてしまう。そのことに気がついてからは、研修の進捗を随時確認しながら、社員一人ひとりに適したメニューへカスタマイズしていくようにやり方を変えました。そして従来の研修では新入社員1名に対して、教育担当者も1名でしたが、多角的視点からフォローできるよう、1、2週間に一度は業務に関する社員が全員集まり、一人ひとりの状況を共有し合っています。このような体制を敷くことで、小さな変化にも目を配り、いち早くフォローができるようになりました。
このような取り組みを行ってきた結果、入社1年以内の離職率が48%だったことに対し、その2年後には11%まで低減するなど、定着率も上がりました。


社員教育について熱く語ってくださった池田社長。社員一人ひとりに寄り添った教育内容を日々、探求されてます。
社員のモチベーションに着目した評価制度を導入
教育制度に限らず、社員が長期的に活躍できるよう、常に人事制度全体をブラッシュアップしています。例えば、等級制度に関しては三等級制から六等級制へと変更しました。社員が高いモチベーションを持って仕事をしていくためには、評価されていると実感できる環境が重要だと考えています。従来の三等級制ですと、一つひとつのハードルが高すぎるため、モチベーションが上がりづらかったと思います。昇格のチャンスを増やすことで、自分が目指す目標が明確になり、高いモチベーションで活躍していただけると考えております。
さらに当社では、ベテラン、若手に関係なく頑張った結果を最大限評価できる仕組みづくりを行っています。
特に1年間頑張って働いた「伸びしろ」を未経験の社員とベテラン社員とで比較すれば、当然、未経験の社員の方が「伸びしろ」が多くなります。社員の「成長」をしっかり評価し、給与にも反映することで評価を具現化しています。
当社で働いている社員のなかには、お客様先に常駐している社員もいます。外部で働く社員に関しても正確な評価ができるよう、CS(顧客満足度)評価を導入しており、お客様の評価と自己評価を照らし合わせながら面談を行います。それと同時にお客様にもヒアリングを行い、総合的に評価ができるようにしています。
また、各個人のキャリアビジョンの形成にも力をいれており、会社として目指してほしい目標と社員の将来的な目標との擦り合わせを行い、MBO(目標管理制度)として、その目標(キャリアビジョン)の実現を支援しています。
これらの人事制度に関しては、私と人事だけではなく、各部門長も全員集まって決めています。現場の意見も取り入れ、しっかりと稼働させてこそ意味があると考えています。
国が働き方改革を進めているなか、様々な案が出されています。まだ法律として定められていないものだとしても、会社が良くなるための施策であれば率先して導入していきたいと考えています。


社外の教育機関と提携しており、社員は自分に適したセミナーを150種類ものなかから選んで受講することができます。
社員の成長が会社の成長。社員を第一に考えた会社づくり
当社で働く社員は、本当に素晴らしい方々ばかりだと思います。正直なところ、技術力やマネジメント力といったスキル部分だけで言えば、私も含めてまだまだ不足しておりますし、これからも色々なことを探求し続けなければいけません。
しかし、当社の社員はみんな主体的です。何か課題があれば自ら色々なアイディアを出してくれるので、私がああしよう、こうしようと指示を出すことはほとんどありません。それは現場のSEにおいても管理セクションにおいても同じです。みんなが意欲的に働きかけてくれるのです。
もちろん、即戦力となる人材も大切ですし、技術や知識も重要です。しかし、積極性や意欲は時に技術や知識を超えることがあります。極論、どのような人でも成長しようという意欲さえあればいくらでも成長することはできます。当社はそのような意欲的な方々が活躍できるよう、様々な取り組みを行っていきます。
今後、当社に入社される方々についても積極的な気持ちと意欲を持って仕事に臨んでいただきたい。私の好きな言葉に「行動こそ真実」というものがあります。つまり、行動に移すことに価値があるということです。自分のアイディアや考えを発信し、行動に変換してこそ価値は生まれます。
また、社員には「誰が正しいかではなく、何が正しいか」という考え方を大切にしてほしいと伝えています。私はこの会社のトップですが、必ずしも私が言っていることが正しいとは限りません。時には自分で考え、導き出した答えが正しいときもあると思います。そのような自分の考えや思いを共有し合いながら、成長していきたいと考えています。
会社の発展は社員の成長があってこそです。社員が成長することが、会社のベースになっているので、今後も社員の成長を第一に考え、会社をつくっていきたいと思っています。
そしてこれから入社される方々には、みなさん「いい顔」をして仕事をしてほしい。定説的ではありますが、それに尽きると思います。苦労して、もがいてもいいんです。もちろん、一人では越えられない壁もあるでしょう。そのようなときは私も上司も手を差し伸べ、一緒に越えます。そのような環境のなかで、「いい顔」をして働いてくれれば、私も嬉しい限りです。


お客様とも確かな信頼関係を築き、常駐先で働く社員にとっても働きやすい環境づくりを大切にされています。