メンバー全員で会社を大きくしたい ボトムアップ経営の可能性
トレスイノベーション株式会社代表取締役社長 塚本翔太
挫折を乗り越えて起業 メンバーの自由を尊重する会社へ
2015年の創業以来、私がトップダウンで決めるのではなく、社員みんなで「あれやろう、これやろう」とアイデアを出し合いながら事業を拡大してきました。
最近では、福岡のCM枠とYouTubeを連動させた新サービスをリリースしましたが、この新規事業もメンバーの提案で実現したものです。さらに、人材採用を統括するメンバーの企画が短期間のうちに結果として現れたケースもあります。メンバーが自由に提案でき、それぞれのやりたいスタイルで仕事に取り組める自由な会社にしたい――起業を決意したときから、そんな想いを持っていました。
私が起業したのは、挫折と開き直りがきっかけです。
ITベンチャー企業の営業だった前職では、当時の社長から「圧倒的な数字を残して役員になれ」と期待されていました。ところが、成績は鳴かず飛ばず。営業ノルマを達成できず、どんどん自信を失っていき、その会社を辞めました。
挫折を味わいましたが、同時に「自分と会社が合わなかっただけ」とも思いました。もう、完全に開き直りです(笑)。ただ、自分に不向きの営業手法を強いられたことは確かで、それまでお客様と懇意にさせていただく営業スタイルで営業成績を上げてきた私が、論理的な営業手法で結果を出すことはとても難しかった。実際、前職を辞めた後に本来の営業スタイルに戻すと、以前のようにお仕事を頂けるようになりました。
そんな挫折と開き直りを経て、「1度自分でやってみよう」と思い至って立ち上げたのがトレスイノベーションです。メンバーに何かを強制するのではなく、自分が望むスタイルで働くことができ、自由な発想やアイデアをかたちにできるカルチャーを今後も醸成させていきます。
また、勤務体系でも、フレックス制を導入するなど、メンバーの自由に任せています。時期によっては案件が詰まってしまい、仕事が夜遅くまで延びたり、タイトなスケジュールになってしまうこともしばしば。その補てんとして、有給休暇を使い切ってもらうことはもちろん、誕生日休暇をはじめさまざまな休暇を導入しています。
このように、当社では企画・提案や働き方などさまざまな面でメンバーの“自由”を尊重しています。


人当たりの良さと軽快なトークが印象的だった塚本社長。両手には、個性的の象徴ともいわれる「ますかけ線」がある珍しい手相をお持ちでした。
全員が社長になれば……思い描く未来のかたち
メンバーには、社長になったつもりで仕事に取り組んでもらいたいです。
当社の2017年のスローガンは「それぞれが社長だと思って行動しよう」。メンバーが社長の目線に立って考えることができれば、メンバーそれぞれの進みたい方向がおのずと見えてくるはずです。私も起業したことで、物事全体を俯瞰的な視点で見ることの大切さや社内外へのアピールの重要性などに気づくことができました。「自分が社長だ」と意識して行動できるメンバーが増えれば、会社が成長するような名案もどんどん出てくると思っています。
当社のホームページをご覧いただけるとわかると思いますが、当社のメンバーはいろいろな価値観を持った人間ばかり。服飾関係から未経験で入社したメンバーがいれば、土日も働きたいくらい仕事が大好きな人間がいるなど、キャラクターは多彩です。
そんなメンバーたちが社長になることを私は応援しています。ゆくゆくは会社をホールディングス化し、それぞれの子会社の社長をメンバーたちに担ってもらいたい。経営者になったメンバーが勢揃いして考えをぶつけ合うことができればとても有益ですし、そのなかから社会に変革をもたらすイノベーションが生まれる可能性も大いにあるはずです。
そのような未来を現実にするために、メンバー全員にはやりたいことを見つけ、新しい事業を展開してほしいです。そのために、当社はメンバーの特長を引き出せる会社でありたい。人間誰しもできない部分はあります。できない部分があるからダメだという会社ではなく、長所をしっかりと評価し、それぞれの武器をどんどん伸ばしていける会社であり続けたいです。


小さな会社でも目立てる方法を打ち出し続ける塚本社長。コーポレートサイトも非常にユニークで、そのコンセプトは「痛さ爆発」。なかには公開に戸惑ったコンテンツもあったようです。
生意気な人間と一緒に働きたい
私には行動の軸となる考えがあります。それは、誰に対しても常に腰の低い人間であることです。年下であろうと年上であろうと、絶対に対応は変えません。
人生を坂道に見立てると、人間は坂道を上っていくときは前かがみになりますが、下るときはのけぞります。つまり、他人を下手に見ている人間は、人生も下り坂であるというたとえです。これは私が美容師時代に聞いた話なのですが、まさにその通りだと思います。ですので、人によって態度を変える人間は正直、大嫌いですね。
腰の低い人間とは相反するタイプかもしれませんが、私が一緒に働きたい人物像は“生意気”な人間です。
目上の人間に対して生意気を言うのは、それなりのパワーがなければできません。もちろん、生意気なだけでは言語道断です。しっかりと自分の信念を持っていて、自分がどう思われても構わないから気持ちを伝えたいという方と一緒に働きたいですね。自分の想いや価値観をどんどんアウトプットできる人間が増えれば、ぶつかることは多くなるとは思いますが、会社はもっと活性化するはずです。
そのようなメンバーと目指しているのがIPO(新規上場)です。その目標へ向けて、今後力を注いでいきたい事業がEC(電子商取引)事業です。現在、ダイエット食品や健康食品を自社で開発中で、まずは年商10億円を目標に動き出しています。そのほかにもYouTuberの方々の協力を仰ぐ広告事業への参入も視野に入れています。また、個人的にはAI事業に進出したいですね。
今後もひとつの事業に絞るのではなく、メンバー全員のアイデアや意見を実現しながら、世の中が驚くサービスを生み出していきたいです。


「誰にでも常に腰を低くする」以外にも信念があるとおっしゃる塚本社長。それは「タバコを吸わないこと」。幼少の頃に誓ったことを今も貫いているようです。